「DXといえば富士通」になれるのか? DX支援に特化した新会社の勝算
富士通がDXビジネスに特化した新会社Ridgelinezや、自社のDXの取り組みに関する発表会を開催した。IT企業からDX企業に変わるために何を行うのか。
「これからの富士通は、DX(デジタル変革)ビジネスの本格化と、当社自身がDX企業となるための社内改革を進める」――富士通の時田隆仁社長は、3月9日の発表会でこう語った。その戦略の中核を担うのが、同社が1月に設立した新会社Ridgelinez(リッジラインズ)だ。
4月に始動するRidgelinezは、企業のDX実現をワンストップで支援するという。企業の戦略策定、AIやクラウドなど利用する技術の選定、導入するシステムの試作・実装、その運用などを担う。顧客のDX支援に特化した新会社を設立した狙いはどこにあるのか。
DXにおける課題をワンストップで解決
4月1日付でRidgelinezの社長に就任する今井俊哉氏は、「DXにおけるよくある課題」として(1)手段が目的化してしまうこと、(2)技術起点で考えてしまうこと、(3)プロトタイプの実装段階で技術的問題が生じること――を挙げる。
Ridgelinezは、こうした課題を解決できるような体制を整える。具体的には、製造業や金融、流通など各業界に特化した戦略コンサルタント、技術選定や業務プロセスの設計を行うコンピテンシーコンサルタント、導入するシステムの全体設計や実装を担当するテクノロジーコンサルタントなどを配置する。
多様な人材を集めるため、新会社では富士通グループとは異なる人事制度を採用。今井氏は「プロフェッショナルとしての市場価値にふさわしい報酬体系を用意する」とし、直属の上司以外が社員を評価する「サードパーティー評価制度」、リモートワークができる環境の整備などを進めるとしている。
「今は採用難といわれる時代。いかに早く優秀な人材を集め、効果的に運用するかが大事になる。それは非常に大変なこと」と今井氏。4月1日時点での社員数は300人ほどで、富士通と富士通総研からの出向者が9割を占めるという。今後は外部人材の採用を強化し、2023年中をめどに社員数を600人強に拡大する計画だ。
初年度は日本を中心に活動するが、グローバルに拠点を持つ富士通グループの強みを生かし、グローバル展開も視野に入れる。国内外のパートナー企業との協力も検討しているという。
新会社について、富士通の時田社長は「自立した企業として競争力のある集団にしていきたい。これまでの富士通は、業務・業種ごとのデータをうまく社内でシェア・活用できず、お客さまや社会に還元する仕組みも十分ではなかった。Ridgelinezは、独自の社内制度やカルチャーによって、柔軟性と機動性に長けた活動をしていく」と意気込みを語った。
Ridgelinezの事業について、今井氏は「まずは単体で売上高200億円前後まで持っていきたい。富士通グループ全体への波及効果としては、「1500億円前後のインパクトを与えたいと考えている」と説明する。
富士通はDX企業になれるのか
富士通は、Ridgelinezで育むDXの知見を社内改革にも生かす考えだ。社内改革に向け、現・日本マイクロソフトの業務執行役員の山本多絵子氏が理事/CMOに、SAPジャパンの福田譲氏が常務執行役員/CIO兼CDXO(最高デジタルトランスフォーメーション責任者)補佐に4月1日付で就任。外部人材の採用にも積極的だ。
時田社長は「富士通は既にDX企業になっていなくてはいけなかった。競合他社が実践できていることの多くを富士通では実践できておらず、もっと早く着手すべきだったと考えている。自社のDXで得た経験を、ビジネスとしても広げていきたい」と語った。
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