手は洗った、スマホはどうする?
新型コロナウイルスの感染予防対策として、手洗いやうがいの有効性が広く知られるようになりました。ただ、スマートフォンを持つとき、「もし、このスマートフォンにウイルスが付着していたら」と思った人も多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの感染予防対策として、手洗いやうがい、咳エチケットなどが有効と広く知られるようになりました。ただ、きれいになった手でスマートフォンを持つとき、「もし、このスマートフォンにウイルスが付着していたら」と感じる人も多いのではないでしょうか。
英国の医療機関Healthcare Infection Societyは、新型コロナウイルスを含むヒトコロナウイルスは、ガラスやプラスチック、金属などの表面で最長9日間も生存できると指摘しました。東北医科薬科大学医学部が公開した家庭向けの「感染予防ハンドブック」でも、手洗いと環境消毒(ドアノブなど身近な金属、プラスチック製品の消毒)など複数の対策を組み合わせることが大切としています。
しかし、スマートフォンは精密機器です。外装には金属にガラス、プラスチックとさまざまな素材が使われていて、エタノールなどの有機溶剤を使ったアルコール除菌は変色や塗装の剥がれ、変形などの原因になるとして、長い間NGとされてきました。
ところが近年、新型インフルエンザやノロウイルスの流行を背景にメーカー側の対応が変わりました。例えばシャープのAQUOSスマートフォンなどには、数年前からアルコール除菌シートが使えると明記された製品があります。注意書きには必ず「変色や塗装剥がれ、変形しないことを保証するものではありません」と添えられていますが、耐薬性能が製品の訴求ポイントになっていることが伺えます。
そして3月上旬、今回の新型コロナウイルス感染拡大を受け、ついに米AppleもiPhoneのサポートページにアルコールを用いた消毒についての記述を加えました。「70%イソプロピルアルコール含有ワイプやクロロックス除菌ワイプ (Clorox Disinfecting Wipes) を使い、iPhoneの外表面を優しく拭き取る分には構いません。漂白剤(ブリーチ)は使わないでください。開口部に湿気や水分が入り込まないようにご注意ください。また、洗剤類の中にiPhoneを浸さないでください」としています。
「除菌ワイプ」は、日本でいう除菌シートや除菌ウェットティッシュのこと。「クロロックス」(Clorox)は米国の大手生活用品メーカーで、「Clorox Disinfecting Wipes」は商品名。米国で入手しやすいメジャーなアルコール除菌シートを例に挙げ、iPhoneのアルコール消毒に使えると「解禁」したのです。クロロックスの製品情報を調べると、Clorox Disinfecting Wipesは70%のイソプロピルアルコールが使われていました。
日本で除菌用アルコールといえばエタノールを思い浮かべる人が多いと思いますが、イソプロピルアルコール(イソプロパノール、IPAなどとも呼ばれる)も工業用途を中心に広く使われています。
イソプロピルアルコールの消毒効果はエタノールと同等ですが、ノロウイルスなどの不活性化作用はエタノールの方が高く、イソプロパノールにはきついニオイもあります。また高い脱脂作用があるため、手荒れになりやすく手指の消毒などには向きません。アルコール除菌をうたうハンドジェルや除菌シートなど、ドラッグストアに並んでいる製品が主にエタノールを使用しているのはこのためです。
イソプロピルアルコールを使った除菌シートは、家電量販店などでもOA機器用クリーナーとして売られています。Apple指定のアルコール消毒シートを使いたい場合、ドラッグストアより家電量販店に行ったほうがいいかもしれません。
でも、お店に駆け込むのは少し待ってください。英国公共放送のBBCは3月中旬、UCL(University College London)の微生物学者、レーナ・シリック博士によるスマートフォン消毒術を紹介しました。家庭用のせっけんと水、柔らかい布(マイクロファイバー布)があれば、効果的に細菌やウイルスの活動を抑制できるとしています。
スマホの電源を落とし、マイクロファイバーの布に水と家庭用せっけんを染みこませたら準備完了。水が機器に入らないように注意しながら、表面をやさしくふきます。後は乾いたマイクロファイバー布で水分を取り除くだけ。微生物の動きを測定する簡易的な検査では、スマホ表面の微生物の数が大幅に減っていました。動画は、日本向けの「BBC NEWS JAPAN」やYouTubeのBBC公式チャンネルで公開しています。
関連記事
- 落ち着いて、マスクは「紙」じゃない
なぜトイレットペーパーが品薄になったのでしょう。「マスクと同じ素材を使っているから」という人もいますが、それはデマです。 - 家庭向けの「新型コロナウイルス予防ハンドブック」 東北医科薬科大がネットに公開
東北医科薬科大学が「新型コロナウイルス感染症 市民向け感染予防ハンドブック」をネット上に公開。家庭でできる具体的な予防策を紹介している。 - 新型コロナ予防効果うたう広告に消費者庁が改善要請 マイナスイオン発生器や空間除菌剤も
新型コロナウイルス感染症の拡大に乗じ、感染予防効果を標ぼうする広告を表示していた事業者に消費者庁が改善を要請。健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌剤で30事業者の46商品が該当した。 - 新型コロナウイルス、世界の感染状況を1カ月前と比較すると?
COVID-19」は実際どこまで広がっているのか。新型コロナウイルスの感染状況を視覚的に確認できる米ジョンズ・ホプキンス大学のWebサイトで1カ月前と比較した。 - Apple、新型コロナ対策でサポートページ更新「端末を除菌シートで拭いても可」に
新型コロナ感染症が拡大する中、Appleが「Apple製品のお手入れ方法」サポートページを更新し、除菌シートや消毒用アルコールでiPhoneなどの製品の表面を拭いてもいいという項目を追加した。 - 感染拡大で通勤ラッシュが悪化する可能性 鉄道会社の対策
新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の影響が各分野で広がっています。今のところ電車は平常通りに運行していますが、さらに感染が拡大した場合には運行本数が減るかもしれません。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.