会議を始めようとしたら、いきなり見知らぬ人物が割り込んできてわめき散らし始めた。授業の最中に子どもたちの前で、突然わいせつ画像を見せられた――。そんな「Zoom-bombing」の被害が多発している。
Zoom会議やZoom授業、ZoomエクササイズからZoom飲み会まで、あらゆる集まりがネット上で行われるようになった今。そうした仮想会議室や仮想教室は、主催者や参加者が対策を怠れば、簡単に侵入を許してしまう。
Zoomは誰でも無料で使えるWeb会議サービス。bombingは爆撃、爆破、爆弾を仕掛ける行為のこと。俗語で「drop a bomb」といえば、衝撃的なことや予想外のことを言う、つまり爆弾発言の意味もある。そこで、Zoomの集まりに他人が乱入して騒いだり、セクハラや人種差別などの暴言を吐いたり、ポルノなどの不快な画像を見せたりする行為がZoom-bombingと呼ばれるようになった。
同義語として、「Zoom Raid」(Zoom襲撃)、「Zoom Trolling」(Zoom荒らし)などの用語も使われている。こうした悪さをする人は「Zoom-bomber」(Zoom爆撃犯)と呼ばれる。bombを動詞として使って「Zoom-bombed」のような言い方をすることもある。
Scottish Swimming has apologised after a public workout event was "Zoom-bombed", subjecting around 300 participants to "disturbing content".(BBC)
公開ワークアウトイベントが「Zoom爆撃」され、約300人の参加者が「不快なコンテンツ」にさらされたことを受けて、スコットランド水泳協会が謝罪した。
bombと聞いて思い出すのは、一昔前の「Mail bomb」(メール爆弾)。特定の相手の電子メールアドレス宛てに大量のメッセージや大容量のデータを送り付けて、そのアドレスを使用不能にしてしまう。メールが主流のコミュニケーション手段だった当時は結構深刻な問題だった。
そうした実害が出るMail bombと違って、Zoom爆撃犯は大抵の場合、軽い気持ちで他人を驚かせて喜ぶ愉快犯の性格が強いらしい。YouTubeなどには、こうしたZoom-bomberが自分の犯行を吹聴する動画も投稿されているという。
当然ながら、これが単純なイタズラで済まされるはずはない。米連邦捜査局(FBI)は、Zoom-bombingを犯罪として取り締まると表明した。
実際に、フロリダ大学の学生会議に何者かが割り込んで人種差別や殺人予告などの暴言を吐いた事件では、FBIが捜査に乗り出し、13歳の少女を検挙している。少女は冗談のつもりでやったと話しているという(WVLT)。
コネティカット州では高校のZoom授業を妨害したとして、10代の少年がコンピュータ犯罪などの容疑で逮捕された(Hartford Courant)。
こうした妨害行為は、適切な対策さえ怠らなければ大抵は阻止できる。Zoomも被害を防ぐ機能の強化を打ち出した。Zoomに限らず、ビデオ会議やリモート授業を開く時は、それなりのセキュリティ対策が求められている。
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