NTTデータが政府系クラウドに本腰、AWSとの戦い方は? 武器は“マルチクラウド指向”のマネージドサービス(2/3 ページ)
NTTデータが政府系クラウド事業に本格参入。AWSが先行する同分野で、これからどう戦っていくのか。担当者に話を聞いた。
公共機関に特有の要件とは?
では、公共機関に特有の要件とはどのようなものか。ここで重要になるのは、クラウドサービスのセキュリティを確保する手法「責任共有モデル」だ。これは、クラウドベンダー側とユーザー側で運用の役割を分担し、それぞれが責任を果たすことで、全体のセキュリティを守る仕組みとなる。
このモデルでは通常、クラウドベンダー側は、クラウドインフラのセキュリティ対策を担う。一方、インフラの上で利用するID管理やアプリケーションのセキュリティ対策などは、ユーザーの責任範囲となる。
だが公共機関では往々にして、情報システム部門の体制が十分ではなく、本来はユーザー側が担当すべき領域で、安全な運用ができない場合がある。NTTデータはここに着目し、公共機関の担当領域も支援する。「ユーザー側の責任範囲に寄り添い、従来のオンプレミスと同じような運用体制を実現します」と同社の長野俊平氏(社会基盤ソリューション事業本部 デジタルコミュニティ事業部 第二ビジネス統括部 第二営業担当)は説明する。
同社は他にも、公共機関からは、(1)データの確実な消去、(2)データセンターへの機器の持ち込み、(3)システムごとのバージョンアップタイミングの調整、(4)2人体制でのオペレーション実施――などのニーズがあると想定している。NTTデータは、こういった独自の要求があった場合は、自社サービスのOpenCanvasを積極的に提案していくという。
自社のクラウドサービス「OpenCanvas」の強み
OpenCanvasは、本来は金融機関に向けたクラウドサービス群。IaaSだけでなく、AIチャットbotやユーザー認証(生体認証、マイナンバーカード認証、ワンタイムパスワード認証など)といったSaaS、各種APIの管理基盤や認証基盤などのPaaSなどから構成される。
運用面では、上記の4項目に対応する他、監査の一環としてシステムの現地調査を求められた場合は、データセンターへの立ち入りも認めている。同サービスと他社のパブリッククラウドをセキュアな回線でつなぐサービスも提供している。同社はこれらを、公共機関が利用するクラウド環境でも実施するという。
こうした強みがあるため、政府共通プラットフォームにAWSが採用されるとはいえ、金融機関とのシステム連携が必要になった際などにOpenCanvasのニーズも別途生じるとNTTデータでは考えている。「OpenCanvasは、パブリッククラウドでは満たせない要件の受け皿になります」と、NTTデータの本橋賢二氏(技術革新統括本部システム技術本部生産技術部 クラウド技術センタ 部長)は意気込む。
NTTデータは今後、これらを含むDigital Community Platformのマネージドサービスを、24年度末までに80ユーザーへ導入する目標を掲げている。既に4ユーザーが先行利用しており、この数字は決してチャレンジングなものではないと古田氏は語る。むしろ「政府公共機関のシステムと金融機関のシステムをつなぐようなものが、今後はさらに増えると考えています。そのためユーザーは、80以上に広がると考えています」(古田氏)と予測する。
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