中国で巻き起こる“ダメマスク狂騒曲” テクノロジーで粗悪品を規制も、穴をすり抜け流通(2/4 ページ)
“アベノマスク”に粗悪品が混ざっていたと報じられている。そのマスクの中には、中国製のものも含まれているようだ。現地で作られるマスクはそんなにひどいのか。中国を専門とする筆者が、現地の模様を解説する。
マスク自販機が登場
コネもなく、ECサイトの争奪戦でも買えない人々は、地元の役所が準備した販売チャンネルから購入する。1つの身分証に付きマスク数枚をAlipay(支付宝)のアプリや各地の市民サービスなどで予約・購入し、指定の薬局などの場所で身分証を見せて店員からマスクを受け取るというものだ。買えるマスクの数は1回に付き数枚と限られているが、役所による地元民のための予約販売とあって比較的買いやすいし、購入時に人が殺到することはない。システムの隙を突いてくる人はいるもので、身分証がないと店で買えないマスクを、他人の身分証の写真を活用して大量購入した人が逮捕された事件もあった。
ごく一部の場所には、実験的にICカードの身分証明書をかざすことでマスクを購入できる自動販売機が設置された。日本でも、自動販売機でタバコを購入するときは、成人識別ICカード「taspo」をかざすが、あれと同じ論理で、1枚の身分証明書に対してマスクを決められた数だけ購入できるようにするシステムだ。設置後にこのマスク自動販売機が全国に広がった話は聞かないが、設置したころにはマスク購入のハードルが下がったか、自販機を所有する企業の力不足で展開ができなかったのだろう。
TencentやAlibabaは規制を強化
中国のIT企業Tencentは、Webサイトを通じて国民のマスク購入をサポートした。例えば、さまざまなECサイトのうち、どのサイトが何日の何時にマスクを発売するかといった情報を集約して表示した。さらに、ユーザーがスマホのGPSを活用して位置情報をTencent側に送ると、その地域の役所が限定販売するマスクの情報を提供した。
他のECサイト事業者は、玉石混交のマスクが転売価格の高値で売られている中で、高値転売とニセモノ販売などを防ぐ指針を発表した。
例えば中国Alibabaは、マスクを販売している店舗を独自のアルゴリズムで徹底的に洗い出した上で、在庫をちゃんと持ち、ニーズに応えてすぐ配送できるショップのみと取引する体制を整備。ショップの体制チェックも行い、マスク販売で問題が発覚したECサイトとの取引はやめ、警察に通報して法的責任を問うなど、厳しいレギュレーションも打ち出した。
それでも、ニセマスクや使用済みマスク、粗悪マスクの販売者が出てきた場合は、業者のリストを時々公表してさらし上げている。昨今は、こうしたAlibabaの動きに他の企業も追随している。著名企業ではないが、ブロックチェーンを活用して、生産したマスクの生産時期や原材料を保証する企業も登場した。
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