中国で巻き起こる“ダメマスク狂騒曲” テクノロジーで粗悪品を規制も、穴をすり抜け流通(3/4 ページ)
“アベノマスク”に粗悪品が混ざっていたと報じられている。そのマスクの中には、中国製のものも含まれているようだ。現地で作られるマスクはそんなにひどいのか。中国を専門とする筆者が、現地の模様を解説する。
中国政府は民間と連携、“三無マスク”の規制も積極化
一方、中国政府は民間のサービスと連携し、マスクが本物かどうかを国民がチェックできる仕組みを構築した。具体的には、スーパーアプリとなった「WeChat」(微信)内でミニアプリ「国家政務服務平台」(国家政務サービスプラットフォーム)を起動し、マスクの生産工場をチェックしたり、マスクのパッケージに書かれたコード(登録番号など)をもとに、製品に問題がないかを確認したりできるようにした。
このミニアプリからは消毒液や防護服の機能もチェックでき、医療現場が必要とする際は、製品情報をもとに生産企業の連絡先を調べ、業者と連絡を取ることも可能だという。
また政府は、メーカーや販売店の取り締まりも強化し、パッケージの説明文などに、生産地・生産業者名・生産日時のいずれかが書かれていない“三無マスク”と呼ばれる商品は買ってはいけないと国民に警告。三無マスクを売っているローカルスーパーや個人商店、三無マスク生産業者へのガサ入れを頻繁に行ったという。
いったんここまでをまとめると、中国の人々は“いいマスク”を買い求める際、主要ECサイトか、役所のサービスか、コネを使ってマスクを購入していることが分かる。ECサイトは独自のチェックを設けていて、転売目的の高すぎる価格のマスクやニセモノには厳しい対処をしている。医療用マスクのパッケージにはコードがついていて、政府謹製の新型コロナ対策ミニアプリでチェックができる。政府は三無マスクを問題視し、被害をなくそうとしている――というところだ。
有象無象の企業が輸出用マスクを生産
さて、中国で新型コロナウイルスの恐怖と向き合っていたころから、世界が恐怖と向き合い始めたころに話は変わる。新型コロナウイルスのピンチを取りあえず脱した中国では、ここを商機とばかりに、有象無象の企業が世界に向けて輸出用マスクを生産しだしたわけだ。
中国のメディアでは、品質お構いなしでマスクを生産し、まともなマスクと混ぜて海外に提供する悪徳業者に当局のガサ入れがあったと報じられている。家屋をマスク工場に転用した“家庭内手工業”の粗悪品マスク工場にもガサ入れがあったとの報道もある。これは「悪徳業者を取り締まっていますよ」という当局のメッセージではあるが、リスクを冒してでも、ひともうけしようとする悪徳業者が湧いて出ていることは確かだ。
悪質なマスクを作らせず、輸出させないために中国政府も対処している。広東省市場監管局は、粗悪品を輸出させないように、広東省のマスク生産企業リストを作成。マスクに問題があった場合は生産・販売をさせないと発表した。さらに経営者に圧力を与えるべく、悪質なマスクメーカーの経営者の信用スコアを下げると発表した。企業名を変えてまで粗悪マスクを量産させるのを防ぐのが狙いだ。
また中国政府は、3月30日と4月25日に、医療用ではないマスクと医療用品の輸出を厳格化する方針を発表した。これにより、輸出業者と輸入業者は、取り扱うマスクを双方で調べ、中国または輸出国の品質標準に合格していることを確認する必要性が出てきた。つまり中国製の劣悪なマスクが輸入業者側で発見された場合、輸出業者の申告はウソとなる。
さらに政府は、これに合わせてマスク製造企業のホワイトリストとブラックリストも公表した。中国メディアは「これまでで最も厳格な輸出ルール」とこれを形容した。政府は会見で、「水際でニセモノも止めるし、価格を高騰させることもない」とも発表している。
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