「楽天の通信量アップは寝耳に水」「競合として対抗」 KDDI高橋社長、楽天へのライバル意識あらわに(1/2 ページ)
KDDIが決算会見を開催。高橋誠社長が登壇し、ローミングで支援する楽天の動きについて「(通信量アップは)寝耳に水」などとコメントした。今後は「UQ mobile」事業を運営子会社から取得し、体制を強化する。
「楽天がKDDIエリアでのデータ容量を月2GBから月5GBに引き上げたのは寝耳に水だ」「ローミング手数料は増えるが、コンペティター(競合)としてしっかり対抗していきたい」。KDDIの高橋誠社長は5月14日に開いた決算会見でこう語り、楽天への対抗意識をあらわにした。
楽天は4月に携帯キャリア事業に正式参入。自社エリアでは無制限のデータ通信と通話ができるプラン「Rakuten UN-LIMIT」を始めた。だが同プランの仕様は、楽天が3月の事前発表で示した内容と一部異なっていた。高橋社長が指摘したのはこの変更についてだ。
楽天は当初、KDDIがローミング(相互接続)で支援するエリアでの高速通信の上限を月間2GBとし、上限を超えた場合は通信速度を128kbpsまで下げる方針を示していた。だが同社は、プランのリリース時に仕様を一部変更。KDDIエリアでのデータ容量を5GBに増量し、超過後の通信速度も1Mbpsに早めるとした。
高橋社長の発言によると、この方針転換に当たって、楽天はKDDIに十分な情報共有を行わなかったとみられる。同社長は会見で、楽天の動向に驚いたとしながらも、「楽天が5GBを提示したからといって、慌てて対応しなかればならない状況ではない」と強気の姿勢を示した。
Rakuten UN-LIMITは月額税別2980円と安価であるため、KDDIエリアでのデータ増強も相まって、KDDIからauユーザーが流出する可能性はあるが、同社長は「(現時点での流出は)想定の範囲内。楽天のMNOに移行しているのは、これまでMVNO(楽天モバイル)に流れていたのと同じくらいのユーザー数だ。MVNOに行く人が減った分、MNOに行ったのだろう」と説明した。
楽天の動きに対抗する狙いもあり、KDDIは5月14日、格安SIMサービス「UQ mobile」の運営事業を子会社UQコミュニケーションズから取得すると発表した。10月以降はauとUQの2ブランド体制で通信事業を推進し、多様化する顧客ニーズに対応する。営業拠点の統合による体制強化や、重複業務の解消に伴う経営資源の効率化などの効果も見込む。
高橋社長は会見で「楽天からのローミング手数料は増えるが、それはそれ、これはこれ」とし、「UQとのダブルブランド化で、しっかりと楽天にも対抗していきたい」と明言した。
携帯キャリア市場では、競合のソフトバンクが、ソフトバンク、Y!mobile、LINEモバイルの3ブランド体制を敷き、ユーザー獲得を進めている。UQの承継には、この体制への競争力を高める狙いもあるとみられ、高橋社長は「多様化した市場に対し、一つのブランドではなく、多様化したブランドで訴求していく」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
KDDI、UQ mobile事業を子会社から取得 auとの2ブランド体制で競争力強化
KDDIが「UQ mobile」の運営事業を子会社UQコミュニケーションズから承継すると発表。UQ社は10月1日付で会社分割を行い、同事業をKDDIに譲渡する。多様化する顧客ニーズへの対応、営業拠点の統合による体制強化などのメリットを見込む。
楽天モバイル、携帯キャリアサービス正式開始 ローミング制限を「月間5GB、制限時1Mbps」に引き上げ
楽天モバイルが携帯キャリアサービスを正式に始めた。パートナー回線のローミングで通信した際のデータ量の上限などを緩和する。
ソフトバンク、20年3月期は増収増益 スマホ向け通信の“3ブランド体制”が堅調 解約率は過去最低に
ソフトバンクの2020年3月期通期の連結決算は増収増益だった。主力の通信事業(個人・法人)をはじめ、全セグメントで増収を達成した。スマホ向け通信の“3ブランド体制”(ソフトバンク、Y!mobile、LINEモバイル)が堅調に推移し、スマホ解約率は過去最低の0.7%となった。
ドコモの20年3月期は減収減益 新料金プラン、dポイント還元などが利益を圧迫
NTTドコモが2020年3月期の通期連結決算を発表。主力の通信事業で、月額利用料を従来の最大4割値引きしたスマートフォン向けプランを展開した影響で減収減益だった。21年3月期の通期連結業績予想は、新型コロナウイルスの影響を考慮して非開示とした。

