「クラウド」とはそもそも何か? 今あらためて学ぶ歴史と基礎知識(2/3 ページ)
クラウドという概念が登場してから14年がたち、サービスは多様化の一途をたどっている。本記事では、クラウドの歴史について概説した上で、その種類についてあらためて解説。その形態や種類について整理する。
クラウドのサービスモデル
こうして普及と進化を続けた結果、現在のクラウドは多様な形態をとっている。国内外問わずさまざまなベンダーが膨大なサービスを打ち出しており、個々の仕組みを全て把握するのは至難の業だ。そこで本記事の後半では、現代のクラウドサービスの分類について基礎から解説していきたい。
まずは、NIST(米国立標準技術研究所)が提示したサービスモデルによる分類の基本である、SaaS・PaaS・IaaSについて整理しておこう(図1参照)。
SaaS(Software as a Searvice:サービスとしてのソフトウェア)
SaaSは文字通り、ベンダーがソフトウェアをサービスとして提供する形態だ。利用者である一般ユーザーは、従来のようにソフトを端末にインストールする必要はない。ネットを介してサービスを好きなだけ使って、ベンダーが定める料金を支払えばいい。また、ユーザーが意識するのは自分が操作するアプリケーションのみで、その裏側にあるOSやハードウェアの運用面まで考える必要はない。
代表例はGmailの他、オンラインストレージのDropboxやビデオ会議ツールのZoomなどがあり、その使い勝手の良さからアプリケーションの種類は拡大し続けている。場所や端末を問わずに利用できるという利便性が評価されたこと、技術の進化によりセキュアで安定して使えることから、企業利用も増えている。
PaaS(Platform as a Service:サービスとしてのプラットフォーム)
PaaSとは、アプリケーションが実行される環境や、それを開発する環境(プラットフォーム)をネットを介して提供するサービスを指す。利用者となるのは一般ユーザーではなく開発者で、彼らはインフラの準備や維持管理の手間に煩わされることなく、すぐにソフトウェアの開発・提供を行うことができる。またモバイル系など、実現するアプリケーションの種類に合わせた環境を整えているサービスも多い。
消費者やユーザーの抱えるニーズが急速に変化する現代では、アプリケーション開発のスピードも上げることが求められるようになっており、PaaSの重要性がさらに拡大している。
IaaS(Infrastructure as a Service:サービスとしてのインフラ)
IaaSが提供するのはITのインフラ部分、すなわちサーバやストレージなどのハードウェア、さらにはネットワークなどだ。従ってその利用者も、企業内でITインフラ周りの運営や管理を行っている担当者ということになる。彼らはIaaSを利用することで、物理的な機器類を管理する手間が省ける他、自社内の需要の増減に応じて、利用するコンピューティングリソースの量を柔軟に変更できる。
利用料は他のモデル同様、従量課金制や定額制が採用されており、前述のように利用企業にとってはITコストの削減につながることが多いが、「ストレージへのデータのアップロードは無料だが、ダウンロードは有料」のように複雑な料金体系が敷かれ、使い方によってはコスト増になるケースも生まれている。
これらの主要な「アズ・ア・サービス」以外にも、さまざまなコンピューティングリソースをサービスとして提供しようという流れが生まれている。例えば仮想デスクトップ(Desktop)環境をサービスとして提供する「DaaS」や、開発環境の中でも特に人工知能(AI)に関連するものを提供する「AIPaaS」といった具合だ。今後もリソースをより細分化したり、深化させたりする形で、新たな「”X” as a Service」(XaaS)が登場する可能性がある。
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