「クラウド」とはそもそも何か? 今あらためて学ぶ歴史と基礎知識(3/3 ページ)
クラウドという概念が登場してから14年がたち、サービスは多様化の一途をたどっている。本記事では、クラウドの歴史について概説した上で、その種類についてあらためて解説。その形態や種類について整理する。
クラウドの実装モデル
前述の通り、NISTはクラウドを整理するもう一つの方法として、実装モデル(誰が利用可能な形になっているか)による分類を提示している(図2参照)。こちらも基本となるプライベート・コミュニティー・パブリック・ハイブリッドの4種類を解説しておこう。
プライベートクラウド(Private Cloud)
プライベートという名前の通り、プライベートクラウドを利用できるのは、特定の組織内に所属する人々だ。サービスを提供するのは、利用する組織自体、あるいはその組織からクラウド運営を委託された外部組織となる。プライベートクラウドはさらに物理サーバの所在によって2種類に分けられ、利用組織が所有する施設内にサーバを置く場合は「オンプレミス型」、外部組織の管理下にある施設に仮想的に専用領域を設置する場合は「ホスティング(ホステッド)型」と呼ばれる。
コミュニティークラウド(Community Cloud)
コミュニティークラウドは利用者を特定のコミュニティー(企業グループや業界団体など)に限定したクラウドで、プライベートクラウドの一形態と見なされることもある。こちらも対象となるコミュニティー自体がクラウドを運営する場合と、彼らから委託を受けた外部組織が運営する場合がある。
パブリッククラウド(Public Cloud)
プライベートやコミュニティーのように利用対象を限定せず、登録すれば誰でも使えるオープンなサービスがパブリッククラウドだ。サービスを提供するのはクラウド事業者で、利用者は彼らが用意した環境にインターネットや専用回線経由で接続し、それを共有することになる。
ハイブリッドクラウド(Hybrid Cloud)
これら3つのモデル、さらにオンプレミスを組み合わせて構築されるのが、文字通りハイブリッドクラウドである。エンドユーザーのレベルでは、いま自分が使っているのがどの環境なのかを意識することはないが、その裏側では、リソースやシステムの要件等に従って、最適な環境が選択されている。
進化は現場主導で進む
このようにクラウドサービスが多様化している背景には、クラウドに対する要求の高度化や変化がある。コスト削減や利便性向上だけでなく、「自社独自の要望に応えられる環境を準備したい」「セキュリティやコンプライアンスにもっと配慮したい」「より柔軟な運用をしたい」といった声を受け、さまざまな在り方が模索されているのだ。また、それを後押しするような技術の進化も進んでいる。
冒頭で述べた通り、クラウドコンピューティングは、現場で使われている技術に後から名前が付いたもので、理念が先にあったわけではない。それと同じく、現在でもその進化は現場主導で進められているといえるかもしれない。
駆け足で説明してきたが、前提知識の整理はここまでにして、次回からは具体的なサービスの姿や、主要なクラウド事業者の動きについて見ていこう。
関連記事
- 海外で進む「オンプレミス回帰」 その背景に何があるのか
2006年に「クラウド」という概念が登場した後、パブリッククラウドは多くの企業に普及した。だが昨今はその流れに逆行し、海外を中心にオンプレミスに回帰する現象が起きているという。その理由とは――。 - なぜクラウドではダメなのか? いま「エッジAI」が注目されるワケ
最近よく聞く「エッジAI」という言葉。エッジAIが注目されている理由や、その活用領域について解説します。 - 「クラウドは信頼できない」は本当か? AWS、Office 365、自治体IaaSの障害を経て、私たちが知っておくべきこと
2019年は国内外で、大規模なクラウドサービスの障害が相次いで発生した。それに伴い、「クラウドサービスは信頼できないのでは」といった議論も巻き起こった。だが、オンプレミスにも課題はある。メリットとデメリットを認識した上で、クラウドとうまく付き合っていくべきだろう。そのために必要な基礎知識と考え方を、ITジャーナリストの谷川耕一氏が解説する。 - ずっと無料で使えるクラウド「Free Tier」主要サービスまとめ(主にIaaS・PaaS) 2020年版
クラウドサービスの多くには、期限なく無料で使える「Free Tier」というサービスが存在します。これらは開発環境やテスト環境としてクラウドを試すには非常に有効です。本記事では、主要なベンダーが提供しているFree Tierを紹介します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.