共和薬品とFRONTEO、“AIで認知症診断”実現へ提携強化 医師・患者の会話から重症度など判定 23年度の薬事承認目指す
共和薬品工業とFRONTEOが、AIを活用した認知症診断システムの実用化に向けて提携を強化。2023年度中の薬事承認を目指し、2020年度中に特許を取得する計画。将来は、診断で蓄積するビッグデータを使った健康管理アプリの開発も目指す。
共和薬品工業とAIベンチャーのFRONTEOは6月3日、AIを活用した認知症診断システムの実用化に向けて事業提携したと発表した。同システムは現在開発中で、臨床現場での医師と患者の会話をAIが解析する仕組みを想定。完成後は音声データから認知症患者特有のパターンを判定し、1分以内に認知症の有無や重症度を導き出すという。実用化に向けて、2020年度中に特許、23年度中に薬事承認の取得を目指す計画だ。
従来の認知症の診断では、医師に専門的な知識や経験が必要とされる他、患者にとっても心理的な負担が掛かるなどの課題があった。同システムを実用化した場合は、短い日常会話から認知機能を判定できるため、医師と患者双方の負担を軽減できるという。
2020年現在、日本国内の認知症患者は600万人を超え、認知症発症リスクが高いとされる後期高齢者数は約1800万人に上るとの調査結果も出ている(厚生労働省と内閣府調べ)。そのため、認知症の早期発見と医療の効率化を実現する同システムは、将来の国家的な課題を解決する可能性があるという。
両社の提携は2月に基本合意していたが、その後協議を重ね、骨子が固まったため正式決定した。今後、FRONTEOはシステム開発を担当し、共和薬品工業は完成後の販売などを担う。売上を得た場合は、共和薬品工業がFRONTEOにロイヤリティーなどを支払う。
認知症診断システムのベースには、FRONTEOと慶応義塾大学が共同開発する自然言語解析AI「Concept Encoder」(コンセプトエンコーダー)を使用する。PC・スマートフォン向けアプリとして提供する予定で、FRONTEOは医療機器の製造・販売に関する業許可を取得する考え。
同システムが実用化に至った場合は、対面に加えてオンライン診療での活用を見込む他、診断によって蓄積したビッグデータを利用し、個人向け健康管理アプリを開発する可能性もあるという。
共和薬品工業の角田礼昭社長は、6月3日の発表会で「われわれの出会いは運命、天命だ。どんな問題が起こっても力を合わせて解決していける」と前向きな姿勢を示した。
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