Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
北京航空航天大学、ハーバード大学、独Festo SEによる研究チームが開発した「Octopus Arm-Inspired Tapered Soft Actuators with Suckers for Improved Grasping」は、タコの触手にヒントを得た吸盤付きのソフトロボットだ。狭い隙間に入りこみ、抱え込むように曲がり、吸盤による吸引で獲物を捕まえる。
このソフトロボットは、先端へ行くにつれ細くなるテーパー型を採用している。テーパー型は、タコの外観を模倣しただけでなく、円筒型よりも把持力が強い。また、狭い場所でも入り込み掻き出せる柔軟性も兼ね備えている。
物体をつかんで保持するには、曲げと吸引の2つの機能を用いる。曲げて物体を抱え込み、吸盤で吸い付き固定する。小さなものはより巻いて抱え込み、大きなものは面に沿って吸い付きつかんで保持する。離すときは曲げと吸盤をゆるめる。これにより、つかむ、持ち運ぶ、離すといった一連の流れが行える。
曲げと吸引の2つの機能は、ユーザーが握った際に配置するボタン操作で行う。ボタンは、アームを曲げるための圧力バルブと、吸引するための真空レギュレーターに統合されており、ワンタッチで制御できる。
曲げと吸引の組み合わせは強力な効果を発揮し、さまざまな形状やサイズ、素材の物体をつかんで保持できる。実験では、薄いプラスチックシート、コーヒーマグカップ、スマートフォン、卵、生きているカニなどに成功している。サイズは直径5mmから750mmまで、重量は2.7kgまでをつかんで保持できる。
(A)平らなプラスチックシートに吸い付き、巻き取って渡している様子(B)ボタン操作で曲げと吸引が制御できる(C)さまざまな形状の物体をつかんで保持できる(D)先端が細いため、隙間に入り奥の物体を掻き出せる
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ロボットの指に触覚を持たせるため、発光体と受信機を内部に用意した。
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