Oracle Cloudが丸ごと顧客のデータセンターで動く 野村総研も取り入れた、新たなITインフラの実力とは(2/3 ページ)
米Oracleが7月、新サービス「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」を発表した。「Oracle Cloud」の提供基盤をユーザー企業のデータセンター内に構築し、社内で利用できるようにするもの。競合サービスとはどんな違いがあり、日本市場ではどんな顧客に支持されるのか。
他社の取り組みとの違いは?
ユーザーの近くにクラウド技術を置く他社のソリューションには、米Amazon Web Services(AWS)の「AWS Outposts」や、米Microsoftの「Azure Stack」がある。
AWS Outpostsは、AWSをオンプレミスで実行するもので、AWSが設計したハードウェアに一部のサービスを搭載し、稼働できる。動かせるのは、「Amazon EC2」「Amazon EBS」「Amazon EKS」のようなコンテナベースのサービスや、「Amazon RDS on AWS Outpost」 のようなデータベースサービスだ。
Azure Stackは、データセンターやエッジなどでハイブリッドクラウドを構築して実行するための環境だ。具体的には、エッジで機械学習やIoTソリューションを実現する「Azure Stack Edge」、オンプレミスでクラウドサービスを動かせるようにし、自律型のプライベートクラウドを実現する「Azure Stack Hub」、ハイパフォーマンスのワークロードに対応するプレビュー版の「Azure Stack HCI」を動かせる。
AWS OutpostsとAzure Stackはいずれも、パブリッククラウドの特定のサービスを動かせる環境を切り出し、顧客のデータセンターに持ち込むものだ。一方、OracleのDedicated Region Cloud@Customerは、クラウドサービスのインフラそのものを顧客のデータセンターで動かせるようにするものであり、サービスの方向性は異なる。
「AWS Outpostsが対応するデータベースは、MySQLとPostgreSQLだけ。RedShiftもなければ、AuroraもDynamoDBもない」とエリソン氏。AWSのRedShiftと比べると、Exadataを@Customerで動かした場合は、50倍ほど低いレイテンシになると同氏は自信を見せる。
野村総合研究所がDedicated Region Cloud@Customerの世界初の事例に
このDedicated Region Cloud@Customerの導入を、世界で初めて決定したのが野村総合研究所だ。野村総研は今後、金融業向けSaaS型ソリューションをDedicated Region Cloud@Customerから新たに提供する。
野村総研はこれまで、10年ほどにわたり、3つの自社データセンターから金融業向けにITソリューションとASP(アプリケーションサービスプロバイダー)型サービスを展開してきた。「これは国内屈指の規模で、3万物理コア、ストレージ容量10PBを越える」と言うのは、野村総研 常務執行役員の竹本具城氏だ。
このサービス群の基盤となるインフラを整備するため、野村総研では400人ほどのエンジニアがサービス運用に従事。過去数年間にわたって、データセンターなどに数百億円規模の投資を行ってきた。2012年からはプライベートクラウド環境を構築し、14年にExadataを導入。「Exadataがサービスを支えている」と竹本氏は言う。
そんな同社は19年2月、公式発表に先駆け、Oracleと日本オラクルからDedicated Region Cloud@Customerを紹介された。その後6カ月ほど検討し、採用を決めたという。採用の決め手は、Exadataを使った可用性の高いインフラを得られることに加え、Exadata以外のOracle Cloudのサービスを利用できることだ。
この他、パブリッククラウドのアジリティの獲得とコスト効果が期待できること、金融機関が求めるネットワーク環境の統制やガバナンスの確保ができること、インフラ運用はOracleが行うため、エンジニアの業務をより戦略的な領域にシフトできること――なども採用に至った要因だという。
野村総研は同サービスを使い、自社データセンター内にクラウド環境を構築した。これにより、従来は「SOC2」や「FISC」などの基準に則して整備してきた高度な金融業向けの統制環境を維持しつつ、Oracle Cloudの各種サービスやツールを活用できるようになった。今後は顧客へのさらなる貢献ができると期待しているという。
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