コロナ禍で脚光浴びるRPA 企業が「業務自動化」に今対応すべき理由(2/2 ページ)
「Withコロナ」などと呼ばれる状況で、従業員の安全を確保しながらビジネスを継続し、成長させる手段としてRPAが脚光を浴びている。RPAを使った業務の自動化に今対応すべき理由をUiPathに聞いた。
デジタル体験の“最初の一歩”は「ウォシュレット」と同じ?
長谷川CEOは「コロナ禍で80歳の高齢者でもZoomを使うようになった。生涯デジタルに触ることがなかっただろう人でさえも、今回のことをきっかけにデジタルを体験した」として、企業ごとではなく日本全体でデジタルに移行する流れができたことが重要と指摘する。
「デジタルの体験は最初の一歩を踏み出すのが一番大変。似たものにTOTOの『ウォシュレット』があるが、あれも使ってみるまではお尻に水を当てるのが怖いと思ったが、いざ使ってみるととても快適」として、デジタルもまず触ってみるというところにハードルがあったが、今回のコロナ禍で日本全体がその重要性を理解したと考えを述べた。
経営層が見た、コロナ禍でのRPAの可能性と課題
UiPathでは6月から7月にかけて、同社のRPAツールを利用している企業に対しコロナ禍でのRPAの利用状況などについて調査を実施。102社の経営層から回答を得た。
例えば、危機対応の面では「今まではコスト削減の観点でRPAを導入していたが、今後は従業員の安全確保の観点でも検討・導入を進めたい」とする意見や、「急激な変化に迅速かつ柔軟に対応できるのがメリット」などと、RPAを評価する声があった。
働き方改革の面では「テレワークで生産性が上がったとは思っていない」「テレワークはオフィスの最適化であって、働き方の最適化ではない」など、生産性の向上が課題として挙げられ、その解決にRPAの活用を検討したいという声が寄せられていた。
一方、RPA自体の活用に課題があるとする声もあった。ある地方自治体は「今回のコロナ禍ではRPAの活用ができず人手に頼らざるを得なかった」という。長谷川CEOは「社内にRPAの使いどころが分かるデジタル人材がいると、日清食品や茨城県庁の事例のように迅速にRPAを適用できる。加えて、個別の業務を最適化するだけでなく、会社のシステム全体を俯瞰して全体最適できる人材が求められる」として、社内にデジタル人材がいるかどうかがRPAの迅速な導入のカギになると指摘した。
デジタルシフトできなければ今後の新卒採用も危うい
政府が2019年に「AI戦略 2019」を策定し、初等教育から社会人教育まで全ての分野にAIやデータサイエンスを教育テーマとして取り入れる方針を示したように、今後は年間で数十万人規模のAI・デジタル人材が社会に輩出されることが予想される。
企業がRPAの活用を進めるために、こうした若い人材が来るのを待っていればいいかというと、長谷川CEOは「そうではない」という。
「昔は表計算ソフトを使える人はスターだったが、今は使えて当たり前。それと同じように、今10代の子たちが社会に出てくる頃には『AIやロボットが難しい』とは思わなくなっているかもしれない。そんな時代に、人間がやる必要がない作業をわざわざ手作業で行っている会社にやってくるだろうか」と、デジタル化に及び腰の企業に対し警鐘を鳴らす。
ではどのように、デジタル化、特にRPAによる自動化を企業は取り入れていけばいいのだろうか。長谷川CEOは英作文ならぬ「英借文」に例える。
「英語のネイティブではない人は、自ら英作文してもネイティブほど自然な文にはならない。だから、ネイティブが書いた文章の一部を変更して伝えたいことを表す『英借文』をした方がいいと、私は高校の先生に習った。それと同じで、RPAを使う現場の人たちは何もエンジニアほど複雑なことができる必要はない。すでにあるRPAロボットの一部をコピーして自分の業務に当てはめる。こうして自動化を進めていくのが今は重要だ」
社内から変わっていかなければ、これからの人材の獲得も見込めない。逆にいえば、デジタルシフトせずに新型コロナを乗り切れたとしても、その後の人材獲得競争で、すでにデジタルシフトを果たした企業に競り負ける可能性が高いということでもある。今デジタルシフトに舵を切ることは、新型コロナへの対応以上に重要な意味を持ちそうだ。
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