日本MS、打倒AWSに意欲 行政クラウド事業を強化 吉田社長「ナンバーワン目指す」
日本マイクロソフトが2021年度(20年7月〜21年6月)の経営戦略を発表。競合のAWSが先行する中、行政クラウド事業を強化する。吉田仁志社長は「ナンバーワンを目指す」と意気込む。
「パブリッククラウドサービス(の市場)では、調査結果によっては当社が1位。今後はどの調査においてもナンバーワンを目指す」――日本マイクロソフトの吉田仁志社長は10月7日、2021年度(20年7月〜21年6月)の経営戦略発表会で、競合するAmazon Web Services(AWS)への対抗心を語った。
日本マイクロソフトは業界トップという目標の達成に向け、21年度も「顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援」に注力し、クラウドサービス「Microsoft Azure」などを拡販する方針。一般企業(物流・小売・製造業)に加え、政府や自治体などへの提案を強化するという。
日本はコロナ禍で「IT後進国だという事実を露呈」
行政向けの事業に力を入れる背景には、コロナ禍に伴ってIT環境の課題が明らかになったことがある。吉田社長は「ハンコ文化からの脱却やデジタル庁の創設などが進んでいるが、日本のITの弱さや、IT後進国だという事実を露呈した。日本全体にDXが必要だ」と力説した。
だがこの領域では、政府が10月から稼働する「政府共通プラットフォーム」の基盤にAWSを採用するなどライバルが先行している。政府共通プラットフォームは、これまで府省が別々に運用してきたシステムをクラウド上に集約したもので、横断的な運用によるコスト削減や業務効率化が期待されている。
こうした中でAWSに対抗する方策は、IaaSであるAzureの他に、「Microsoft 365」などのSaaSや、ノーコード開発ツール「Microsoft Power Platform」などのPaaSを組み合わせたソリューションを提供すること。18年に運営元を買収した「GitHub」を通じたシステム開発のサポートや、IT人材の育成の支援も行っていくという。
「AWSが先行しており、当社はチャレンジャー。行政機関にバリューをご理解頂けるよう、IaaS、PaaS、SaaSと幅広い選択肢を用意する。既存のシステムをクラウドに移行するだけでなく、クラウド時代にあった迅速な開発もサポートする。テクノロジーを政策立案に生かせる人材も育てる」と、日本マイクロソフトの佐藤亮太氏(執行役員常務 パブリックセクター事業本部長)も力を込めた。
コロナに影響されているビジネスを盛り上げる
一般企業にも同様に、豊富なクラウドサービスと、それらを駆使したソリューションを提供する。物流・小売・製造の3領域に力を入れる理由は「コロナに影響されている分野をなんとか盛り上げる」(吉田社長)との思いからだという。
すでに大企業からの引き合いもある。ヤマトホールディングスではAzureにデータを集めて分析し、配送の効率化に生かしているという。日立製作所では製造現場のデータを収集し、設備や作業員の稼働状況を可視化。ローソンやファミリーマートの一部店舗では、Azureを基盤としたシステムによってロボットを遠隔操作し、商品の陳列を行っているという。
中堅・中小企業の獲得も並行して進める方針で、吉田社長は「中小企業が事業継続のために必要なリモート環境の整備を支援する。ワークショップやトレーニングなども含め、今までにない低価格のサブスクリプションを提供する」とした。
行政関係者、企業の経営者、学生に向け、IT活用、プログラミング、AI関連の知識をレクチャーする動画コンテンツも拡充する。
「痛みを踏まえた提案」でAWSと差別化
吉田社長は「これらの施策は、個別にみれば競合もやっているかもしれないが、当社は顧客に寄り添うことができる。当社も社内でDXを推進し、マーケティング戦略や評価制度、コミュニケーションの方法を変えてきた。その中でたくさん失敗をしてきた」と強調。
「正論をかざすのではなく、こうした痛みを踏まえたサポートを提供し、その中でクラウドを提案する。AWSと同じ戦い方ではない」とし、国内市場での首位獲得に意欲を見せた。
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