PlayStation 5体験取材から考える、PS5の「狙い」と「課題」(3/3 ページ)
PlayStation 5実機を試遊した西田宗千佳さんが、SIEが新ゲームコンソールをこの仕様にした理由を推測する。
「市場としてのPS5の価値」を早期に確立できるかが課題
では懸念点はないのか? もちろんある。
高速読み込みやDualSenseでの「見立て」は、PCではそのままは使えない。PCより最適化を進めたXbox Series S、Series Xも読み込みは快適になるだろうが、スペック上の読み込み速度はPS5に劣る。
現在のゲームは、多くが「複数プラットフォーム提供」になっている。大規模なゲームと小規模なゲームではビジネス上の理由が若干異なるが、どちらにしろ「PCで開発してゲーム機に最適化して展開する」ことに違いはない。だとすると、PS5への最適化はあくまで「追加投資」ということになる。その追加投資をどのくらいやってくれるだろうか?
SIEも、そんなことは百も承知だろう。だから、「最適化しなくてもある程度快適」「最適化にかかる手間とコストが小さなものになる」ことは意識しているはずだ。一方で、「ゴリゴリの最適化をして差別化し、PS5専用とすれば商品価値が上がる」というアピールもしているはずだ。それがどのくらい成功するのかは、フタを開けてみないと分からない。
もう一つの懸念は、ロード時間の短縮にしろDualSenseの可能性にしろ、「触れてみないと差が分かりづらい」ということだ。本当ならば体験会をたくさん開催する予定だったのだろうが、今はそういうわけにはいかない。今回、プレス向け体験と同時にYouTuber向けの枠を用意したのは、文字よりも動画によって伝える方が可能性が高い、と判断されてのことなのではないか。
一方で、ライバルのMicrosoftは、スペックは大幅に下がるもののより安い「Xbox Series S」(税別2万9980円)を用意したり、オンラインサービスによってPCとXboxの間で「遊び放題」のゲームを増やして、より多様な環境でゲームをプレイしやすくするなど「プレイの場所と時間とコストの制約を下げる」方向で、プラットフォーム全体として差別化をしている。それはそれで面白い戦略だ。
SIEの最大の課題は、「結局、PS5がたくさん売れなければ次への土台ができない」ということだ。たくさん売れて認知が広がり、友人宅や店頭でPS5に触れた人も増え、最適化されたゲームが出やすい土壌ができることが、「次世代機として差別化されたPS5の価値」を高める。
そういう意味でも、COVID-19でイベントが開けないこと、そして、初期出荷に人気が集中して「欲しくても買えない人が多くいる」ことは、PS5にとって大きなリスクなのである。
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