サントリー、国内の全サーバ1000台をAWS移行 データセンター解約で「身軽になった」(2/2 ページ)
サントリーは2020年7月までに、国内の全サーバ(1000台超)をオンプレミスからAWSに移行したと明らかにした。今後は海外のグループ企業でもAWSへの移行を進め、ITインフラを統合管理する方針。
AWS移行の思わぬ課題とは
これらの作業によって全サーバをクラウド化し、前述の手応えを得ているものの、課題もあったと加藤取締役は話す。
「不要なサーバの棚卸しにも手間取りましたが、データの移行には想定以上の時間を要しました。最初はデータ転送サービスの『AWS Snowball』を試したものの、ダウンタイム(稼働停止時間)が長くなり、有線の『AWS Direct Connect』をオンプレミスに接続してデータを送る方針に切り替えました」
また、移行した当初のITインフラは、以前のオンプレミス環境よりもパフォーマンスが落ちることがあった。そこで専任チームは、AWSのサポートを得ながら、ストレージへのI/O(入出力)のチューニングなどを行って対処したという。
現在はパフォーマンスを改善できており、今後はコンテナやサーバレスといった最新技術を取り入れてインフラをさらに強化する方針だ。データ分析も本格化し、小売店で売り上げがアップしやすい商品の並べ方などを検討するとしている。
国内での経験を生かし、海外での移行プロセスを洗練
日本でのAWS移行で得たノウハウを生かして、サントリーグループでは20年夏から米国と欧州の企業でAWS移行を始めている。アジアやオセアニアでは21年から移行する予定だ。クラウド化が難しい一部のシステムの基盤にはプライベートクラウドを採用するが、22年にはサントリーグループのシステムの大半がAWS上で稼働する見込みだ。
「チームに海外メンバーを組み込んだことで(国内の)現場では一体感が出ました。グローバルでの移行プロセスはかなり洗練されています。これにより、セキュリティやネットワーク接続性、コスト面などをさらに改善していきます」と、グループ全体の持ち株会社・サントリーホールディングスの城後匠氏(経営企画・財経本部 BPR・IT推進部 部長)は話している。
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