「けしからん発想」が創造性を生む 天才プログラマー・登大遊氏が語る「シン・テレワークシステム」開発秘話(3/3 ページ)
「SoftEther」の生みの親で“天才”と称される登大遊氏が、「CEATEC 2020 ONLINE」の講演に登壇。同氏が手掛けたシンクライアントVPN「シン・テレワークシステム」の開発秘話などを紹介した。こうしたサービスを次々に生み出せる背景には、若手時代に培った創造性があるという。
組織が「大人になること」を求めると、才能はつぶれる
登氏がこうした「けしからん」実験と並行して改良を重ねた結果、最新版の「SoftEther VPN」は現在、全世界の480万ユーザーのサーバで動作し、数百万人が利用する著名サービスへと育っている。
だが今の日本では、登氏のように自由な発想のもとで画期的なサービスを生み出せる人材はまれだという。登氏の見立てでは、日本の大企業には世界と比較して勝るとも劣らない、優秀な若い人材や設備などがそろっている。しかし、GAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple)のようなプラットフォームを生み出せる人はあまりいないとみている。
その理由について、登氏は「日本の大企業に、若い人のアイデアを生かせる環境がないことだ」と指摘。日本企業が一皮むけるためには、若い人による独自のプログラミングや実験を黙認したり、ネットワークを自由に使える土壌や環境を整えることが重要だと説いた。
これまで述べた通り、登氏の学生時代は、遊び感覚で面白いプログラムを書くことや独創的な実験を行うことを許してくれる環境があった。そこからは同氏だけでなく、可能性に富んだ人材がたくさん登場し、大企業などに入社した。だが現状、多くの若い技術者は、組織の論理のもとで“大人”にならざるを得ず、独創性や創造性を失ってしまっているという。
こうしたケースを防ぐためにも、独創的な実験やプログラミング、ネットワーク利用を黙認する寛容さが組織に求められると登氏は訴える。
「Mosaic、WinNuke、BackOrifice、Napster……。世界中のモノ好きがPCやネットで遊びながらこれらのサービスを生み出し、無限の可能性を感じた時代があった。この時の若手の成長が、次の30年の全てのICTビジネスの基礎となった。(日本企業は)この『けしからん』時代を思い出そう」(登氏)
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