東証システム障害、新社長は「責任の一端はわれわれに」 富士通には「システム開発に全力を挙げて」
JPXの清田瞭CEO(最高経営責任者)が記者会見を開き、富士通に「損害賠償する予定はない」と明言した。
「専門家から『富士通にかなりの責任がある』という指摘があるが、それだけが売買停止の原因ではない。取引が停止しても大丈夫なように手を打っていなかったわれわれにも責任の一端はある」――東京証券取引所(東証)で発生したシステム障害を巡り、東証の新社長に就任する日本証券取引所(JPX)グループの清田瞭CEO(最高経営責任者)は11月30日、記者会見でそう話した。
清田CEOは記者団からの「富士通に何らかのアクションを取る予定はあるか」との質問に対し、「富士通には十分な責任を感じてもらい、再発防止のために、堅牢でレジリエント(柔軟)なシステム設計・開発に全力を挙げてもらいたい」とコメント。辞任を表明した宮原幸一郎社長と同様に、富士通に損害賠償を行う可能性を否定した。
清田CEO「今後はネバーストップと復元力の向上に注力」
東証は、システムトラブルを起こさない市場運営を心掛けるとして「ネバーストップ」をスローガンに掲げている。清田CEOは「スローガンについては間違ってはいないが、それが強く出過ぎて、止まることが現実に起きた」とし、「ネバーストップとは言っても、(障害発生時に)どう再開するかという仕組みが脆弱だった」と指摘。
「ネバーストップを取り下げることは考えていない」とスローガンは継続するとしながらも、「今後はレジリエンス(復元力)の向上をもう1つの柱としてしっかりと取り組み、システム構築の全体像に組み込んでいく必要がある」と話した。
清田CEOは宮原社長の辞任の背景についても触れた。内部会議では「辞任の話は出なかった。解任には及ばないという結論だった」と明かした上で、「本人が辞任への強い意志を固めたため、やむを得ず受理した」という。
1988年に東証に入所した宮原社長は総務部長などを歴任し、内部の生え抜きとして2015年に東証の代表取締役社長に就任した。
清田CEOは2013年から15年まで東証の社長を務めており、今回の新社長就任で“再登板”となる。
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