中国科技大、光量子コンピュータで「量子超越性」を実証 スパコン富岳で6億年かかる計算を200秒で
中国科技大の研究チームが、従来のスパコンより量子コンピュータの計算能力の方が上回ることを示す「量子超越性」を光量子コンピュータで実証した。
中国科学技術大学などの研究チームは12月3日(現地時間)、量子コンピュータの計算能力が従来のスーパーコンピュータを上回ることを示す「量子超越性」を、光を使った量子コンピュータで実証したと発表した。同日付で米科学誌「Science」のオンライン版に掲載された。
光の最小単位である光子は、ボース粒子(ボソン)という素粒子に分類される。研究者たちは50個の光子と100個の光子検出器を使い、干渉し合う多くのボソンの確率分布を計算する「ガウシアンボソンサンプリング」を行った。このサンプリングを光量子コンピュータで200秒間行った際の計算を中国のスパコン「神威・太湖之光」(Sunway TaihuLight)で行うと25億年、理化学研究所の「富岳」で行っても6億年かかるとしている。
量子超越性を巡っては、2019年10月に米Googleが、超電導量子ビットを使った量子コンピュータプロセッサ「Sycamore」で、スパコンで約1万年かかる計算(ランダム量子回路サンプリング)を200秒で解き終えたとして話題になった。しかし、同じく超電導タイプの量子コンピュータを開発している米IBMは「スパコンでも約2.5日で解ける」と反論していた。
今回、中国科技大の研究者たちが行ったガウシアンボソンサンプリングは、計算量理論において計算が難しいことを示す「NP困難問題」よりもさらに難しい「#P困難問題」に属するという。このため、量子超越性を示す計算問題の一つとして有望視されていた。
ただ、英科学誌Natureの取材に対し「中国の研究チームが作った光の回路はプログラマブルでなく、実践的な問題を解くことはできない」と、カナダの量子ベンチャーXanadu(ザナドゥ)のクリスチャン・ウィードブルークCEOは指摘している。中国の研究チームも「自然な次のステップは、われわれが開発したGBS(ガウシアンボソンサンプリング)量子コンピュータを現実世界の問題に応用することだ」と論文の中でコメントしている。
【訂正:2020年12月8日午後4時 初出時、Natureの取材に対する発言者について間違いがありました。お詫びして訂正します】
それでも、同じくNatureに取材を受けた英インペリアル・カレッジ・ロンドン大学の物理学者、イアン・ワルムスレイ教授は「これは間違いなく離れ業の実験で、重要なマイルストーンだ」と研究を評価した。
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