東大、光量子コンピュータに進展 大規模な「量子もつれ」を生成、常温・省スペースの量子計算へ
米IBMやGoogleなどが研究している「ゲート方式」とは異なる方式の量子コンピュータで、実用化に至れば常温で動作する上、10円玉サイズのチップに回路を収めることも見込めるという。
東京大学は10月18日、光を用いた量子コンピュータの研究で、大規模な量子もつれ状態を作ることに成功したと発表した。米IBMやGoogleなどが研究している「ゲート方式」とは異なる方式の量子コンピュータで、実用化に至れば常温で動作する上、10円玉サイズのチップに回路を収めることも見込めるという。
現在、汎用的な量子計算を行うためのマシンとして「ゲート方式」の量子コンピュータの開発が行われている。しかし、計算の単位となる「量子ビット」を増やすにつれ、量子ビット間の配線が複雑化するなど、大規模化には課題を抱えている。ゲート方式量子コンピュータの量子ビット数は、2019年時点で50量子ビット程度。
東大の古澤明教授の研究室では、1つの光源から出てきた光を時間的に区切ることで無数の量子ビットを生成する装置を13年に開発し、規模の大きい量子もつれ状態を作ることに成功していた。
古澤研の量子コンピュータは、ゲート方式ではなく「一方向量子計算」という量子計算の実現方式を採用している。これは「クラスター状態」と呼ばれる多数の量子ビットから構成された量子もつれ状態を用意し、行いたい量子計算に応じて各量子ビットを測定することで量子計算を行うというもの。
今回古澤研が実現したとするのは、「2次元クラスター状態」という大規模な量子もつれ状態。縦に5個、横に5000個の計2万5000個の量子ビット(光パルス)が格子状に量子もつれを作る。縦が入出力数に対応し、横が計算ステップ数に対応するため、この2次元クラスター状態では5入力・5000計算ステップの任意の量子計算が原理的には可能になるという。
今後は2次元クラスター状態を使った量子操作の実証を進めていく他、同状態を10円玉サイズに収めるチップの開発を視野に入れて研究を続けるとしている。
研究成果は、米科学雑誌Scienceに同日付で掲載された。
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