このお酒は「すずしげ」風味――AIが日本酒の味や香りを表現する新サービス
AIベンチャーのSCENTMATICが、AIが分析した日本酒の風味を基に、飲食店の客がタブレット端末を操作して好みの日本酒を選べるサービスを開発した。2021年4月から飲食店向けに販売を始める。
AIベンチャーのSCENTMATIC(セントマティック、東京都渋谷区)は12月9日、AIが分析した日本酒の風味を基に、客がタブレット端末を操作して好みの日本酒を選べるサービス「KAORIUM for Sake」(カオリウムフォーサケ)を発表した。12月11日に横浜高島屋へ導入し、2021年4月から飲食店向けに販売を始める。
飲食店に設置されたタブレット端末で客が日本酒の銘柄を選ぶと、AIによって分析した香りや味わいを表すワードを画面に表示。ワードは「あたたかみ」「すずしげ」「ふくよか」の3種類をベースとし、「あたたかみ」は「パッションフルーツ」「百合」「華やかな南国の花々」など、各ワードで感じられる風味の要素や情景も表示する。「さらりとした」「控えめ」などキーワードから日本酒を探すこともできる。
SCENTMATICと日本酒ソムリエの赤星慶太さんが共同で開発。赤星さんや、日本酒を飲んだ人の感想と銘柄の1万件以上の情報をAIに学習させ、それぞれの銘柄の風味にマッチするワードを可視化した。日本酒を飲んだ客がその銘柄にふさわしいと感じる風味や要素をタップすることでAIにキーワードを学習させ、銘柄とマッチするワードをアップデートしていく。
記者も実際にKAORIUM for Sakeを体験。山口県の「獺祭 純米大吟醸45」を試飲し、一番風味を感じた「ラムネ」をタップすると、画面に「あなたが感じた言葉をAIが学習し進化します」と表示された。
同社の栗栖俊治代表取締役によると、KAORIUM for Sakeを利用することで客が具体的に風味をイメージしながら好みの日本酒を選べるようになり、日本酒の楽しみ方が広がるという。開発の担当者は「タブレットに表示されるワードが正解というわけではなく、自分の気付かなった風味や味わいを知れる点がポイント」と話す。
飲食店にとっては、KAORIUM for Sakeを活用した新しい日本酒選びを客へ提供できる他、コロナ禍で日本酒について説明する対面接客の機会を減らせるメリットがあるとしている。
開発の背景には、世の中で日本酒の銘柄があまり知られていないことがあるという。SCENTMATICによると日本酒の銘柄は1万以上あるにもかかわらず、消費者が認知している銘柄はその中の0.1%程度。「店でどれを頼めばいいか分からない」「飲んでみても違いが分からない」「難しそうでとっつきにくい」といった消費者が抱くイメージを解消し「日本酒の香りや風味を多くの人が楽しめるようにしたいと思った」(栗栖代表取締役)という。
12月11日に横浜高島屋にオープンする日本酒バー「BAY-ya」(ベイヤ)に導入する他、21年1月には新宿の日本酒バル「AKAKUMA」へ提供する。4月には飲食店向けに販売を始め、初期導入費と半年分のランニングコストを無料で提供するプランも用意する。タブレット端末に表示する日本酒の種類は、メニューに応じてアレンジできる。
一般家庭向けには3月、KAORIUM for Sakeと日本酒のミニボトル6本をセットで販売する。家庭でもKAORIUM for Sakeを体験できるという。
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