“ショーケースの向こう側”を操作できる技術 MIT「inDepth」開発:Innovative Tech
ガラスのショーケースに入っているものを指し示すことが簡単にできる。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米MIT Media Labの研究チームが開発した「inDepth」は、透明なパネルやガラスを外側から指で押さえることで、向こう側にある物体とやり取りできるシステムだ。例えば、ショーケース内の食品や、3Dディスプレイ内のオブジェクトとインタラクションができる。
inDepthは、手前にある物理障壁の表面を指で押さえ付けることによって3次元空間内のポイントを指定し、向こう側にある物体とのインタラクションを可能にする。ユーザーは、障壁表面に加える力の強さや方向を変えることで、指定する点の深さや向きを制御できる。
ハードウェアは、バリア下に設置された3自由度の力覚センサー(90 x 90 x 35 mmの立方体)3つで構成。これらに加えられた力を方向ベクトルとして追跡する。表面上に加わった力の検出から接触点や方向の計算、力から深さへの変換を行い、ユーザーが指す方向に位置する物体へのさまざまな操作を実行する。
研究チームはシステムの実用性を評価するために、いくつかのアプリケーションを作成し紹介している。例えば、ショーケースの表面に力を加えることで、ショーケース内の食品周辺を光らせ、どの食品を示しているかを表示するアプリケーション。これによって店員は客が欲しい食品をスムーズに認識でき、客も話して説明する必要がなくなる。
他にも、3Dディスプレイ内のタンパク質オブジェクトに対して拡大縮小や回転などが行えるアプリケーション、立体的な人体オブジェクトを医学的な観点から学ぶ断面アプリケーション、電動ドリルをシステム上に置きさまざまな方向から表面に力を加え内部構造を探るアプリケーション、太陽系を動かせる太陽系儀アプリケーションなどが紹介されている。
博物館や水族館などの、ガラスが多く使われる施設での活用も考えられる。店舗や官公庁などで使用する飛沫防止用透明パネルにも利用可能だ。
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