Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
コロンビア大学、Snapの米研究チームが開発した「BackTrack」は、背面に小さな2次元トラックパッドを搭載したスマートフォンケースだ。スマートフォンを片手で持った際に人差し指で操作できる位置にトラックパッドが配置されており、人差し指で滑らかな操作ができる。
大きめのスマートフォンを使っている場合、片手で持ちながら、その手の親指だけで操作するのは非常に難しい。さまざまな解決策が模索されてきたが、今回はスマートフォンを後ろで支えている人差し指を画面操作に活用する。
スマートフォンケースの背面に小さなトラックパッドが仕込まれており、ユーザーはこのトラックパッドを指でなぞることで、前面のディスプレイを操作できる。
背面トラックパッドは、ケース側面のスイッチを押しているときだけ機能する。そのため、誤ってトラックパッドに触れても作動しない。スイッチは、自然に押せるように片手でスマートフォンを持った際の親指の位置に配置した。
これらの機能は、電源不要で無線やポート接続もいらない。OSの変更も不要で、薄いシステム全体がケースの背面に封入されているだけなので、市販のスマートフォンやタブレットでも着用してすぐに使用可能だという。
従来のタッチスクリーンの多くは、静電容量式のセンシング技術に基づいている。タッチスクリーンの下に配置された一対の電極の容量変化を測定し、指のような導電性の物体の接触と位置を感知する仕組みだ。
今回のアプローチは、この感知を背面でも行えるように、導電性のワイヤを使って前面タッチスクリーンのとあるポイントを伸ばし、ワイヤのもう一方の端を背面まで持ってきている。前面の静電容量式センサーを背面まで拡張して機能させるイメージだ。
電極を剥き出しで前面に持ってくるとモニターが見えなくなるため、透明のガラスに酸化インジウムスズをコーティングし電極を見えなくしている。
このままでは前面のタッチスクリーンの大きさと同等サイズを背面にも用意しなければならず、背面全体をトラックパッドにしてしまうという状態になる。そこで、トラックパッドの電極を2つのグループに分けることで、前面全体を背面の小さな領域だけで操作できるようにしている。
(a、b)前面のタッチスクリーンを背面にそのまま拡張するだけでは、背面全域をトラックパッドにしなくてはいけない(c、d)背面の小さなトラックパッドエリアだけで前面を操作できるように、トラックパッドの電極を2つのグループ(緑と黄色)に分かれるようにしている
デモンストレーションでは、背面をスワイプしてWebコンテンツをスクロールする、シューティングゲームの機体をコントロールする、といった使い方を紹介。周囲の人に見られずスマートフォンのロックを解除する手段として、いくつかのスワイプの組み合わせで解除する使い方も紹介している。
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