Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
英ニュー・サウス・ウェールズ大学の研究チームが開発した「Bio‐Inspired Conformable and Helical Soft Fabric Gripper with Variable Stiffness and Touch Sensing」は、ゾウの鼻のように対象物に巻き付いて、つかみ、持ち上げ、離す一連の動作が可能なロボットだ。薄く平たい布で構成され、軽量なのが特徴。ロボット自身の重量の最大220倍まで把持(つかんで保持すること、はじ)できる。
重量8.2gのプロトタイプを使った実験では、1.8kgの物体を持ち上げることに成功。長さ13cmのプロトタイプで、直径が30mmまでの対象物なら把持できた。重量と把持部分の直径が制限内であれば、さまざまな形状の物体を固定し持ち上げられる。例えば、カバンやコップの取っ手部分に巻き付けて持ち上げることも可能だ。細長く柔軟な素材なので、狭い場所で引き上げるのにも活躍できる。
変形して巻き付く動作には、軟化と硬化を繰り返せる可変剛性システムを取り入れている。巻き付く前は柔らかい状態、巻き付いた後は硬い状態で動作する。高い伸縮性がある液体金属ベースの触覚センサーを組み込んでおり、対象物に巻き付くのに適切な握力を検出し、対象物の損傷を防ぐ。
製造方法もシンプルでスケール可能だ。例えば、長さ1mの巨大ロボットを直径300mm以上の箇所に巻き付けて物体をつかんでおけるという。
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