米国防総省、Microsoftとの100億ドル契約「JEDI」をキャンセルし、仕切り直し
米国防総省は2019年にMicrosoftと締結した100億ドルの「JEDI」プロジェクトを破棄すると発表した。この契約に関してはAmazonが申し立てており、プロジェクトが一時停止していた。国防総省は新たな「JWCC」プロジェクトで両社から提案を受ける計画。
米国防総省(DoD)は7月6日(現地時間)、2019年に米Microsoftが落札した100億ドル規模の「JEDI」(Joint Enterprise Defense Infrastructure)クラウド契約を破棄すると発表した。新たなイニシアチブの下、クラウド事業の新たな取り組みでMicrosoftと米Amazon.com傘下のAWSの両社から提案を求める計画。
DoDは契約破棄の理由を「要件の進化や業界の進歩により、JEDIクラウド契約はもはやニーズを満たしていないことを確認した」としている。
この契約は当初Amazonが獲得するとみられていた。同社はMicrosoftが契約を獲得したことについて、決定にはドナルド・トランプ米大統領(当時)の意向が強く反映されたものだと主張し、プロジェクトの一時停止を米連邦請求裁判所申し立てた。裁判所は昨年2月、この申し立てを認める判決を下し、プロジェクトは停止していた。
Microsoftは同日、DoDは(Amazonとの)何年にもわたると予想される訴訟を回避する道を選んだと指摘し、「米国の安全保障は1つの契約より重要であるため、DoDがこの道を選んだことを尊重し、受け入れる」と表明した。Amazonが起こした訴訟の判決には少なくともあと1年かかり、その後上訴される可能性もあったとしている。
DoDの新たなイニシアチブは「JADC2」(Joint All Domain Command and Control)と「ADA」(Artificial Intelligence and Data Acceleration)の2つ。
JADC2は、空軍、陸軍、海兵隊、海軍、宇宙軍などすべての軍のセンサーを単一のネットワークに接続するクラウドシステムに関するイニシアチブ。ADAはデータに基づくAI主導の戦闘コマンドネットワークに関するイニシアチブだ。
これらのイニシアチブの下、新たな取り組み「JWCC」(Joint Warfighter Cloud Capability)でMicrosoftとAmazonに提案を求める。ただし、要件を満たすと判断すれば、他の企業にも入札の機会を与える。DoDoは、JWCCはマルチクラウド、マルチベンダーの無期限配信契約になるとしている。
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