元素の「周期律」にほころび? 金属元素「ドブニウム」が金属の性質持たず
日本原子力研究開発機構の研究チームが重い金属元素「ドブニウム(Db)」の性質を調べた結果、周期表から予想できる性質に反して金属的な性質を失っていることが分かった。
重い金属元素「ドブニウム(Db)」の性質を調べた結果、周期表から予想できる性質に反して金属的な性質を失っていることが分かった──日本原子力研究開発機構が、7月7日にこんな研究結果を発表した。この元素の化合物を分離して調べたのは世界で初めてのことで、今回分かった性質から、いまだに完成していない周期表の理解が進むことが期待できるという。
ドブニウムは1967年に発見された、原子番号105番の元素。核融合反応で人工的に生成できるが、生成率が5分当たり1個と低いことと、寿命(半減期)が約30秒と短いため、実験で扱うのが難しく、その化学的性質は明かされていなかった。
研究チームは、同機構の加速器を使ってドブニウムを合成し、独自に開発した分離装置によってドブニウムの純粋な化合物を分離。この化合物と、ドブニウムと同じ周期表第5族の元素(ニオブやタンタル)の化合物について、気体になりやすさを比較したところ、ドブニウム化合物の揮発性が予想よりも高かったという。
ドブニウム化合物の揮発性が高かった理由について、研究チームは「ドブニウムが持つ強い“相対論効果”の影響で、『電子を放出しやすい』という金属的な性質が薄まったことが原因」と考察している。
相対論効果は、原子核の周りを回る電子の運動速度が光速に近づくにつれ、相対性理論に基づいて電子軌道が変化すること。ドブニウムのように重い元素ほど相対論効果が強くなり、周期表から予想される科学的性質を持たない可能性が高まるといわれている。
周期表は約150年前にロシアの化学者ドミトリ・メンデレーエフ氏が考案した、元素が持つ性質の周期性に注目した表。メンデレーエフ氏は当時見つかっていなかった元素の存在をここから予言し、実際にいくつかの元素が見つかった。しかし、メンデレーエフ式の周期表とは別に、立体的なものなどいくつかの形式も考案されており、元素の性質をよりよく表すために現在でも研究が進んでいる。
研究チームは、今回の成果が周期表全体の理解や理論化学の計算精度の向上に役立つとしている。
この研究成果は、独化学会誌「Angewandte Chemie」に7月2日付でオンライン掲載された。
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