国交省、デジタル地図で“盛り土”の全国調査へ 熱海市の土砂災害を受け
国土交通省は太平洋側での記録的な大雨の影響で7月3日に発生した、静岡県熱海市の大規模な土石流災害を受け、“盛り土”の全国調査に国土地理院のデジタル地図を活用すると発表した。
国土交通省は7月9日、静岡県熱海市で3日に発生した土石流災害を受け、国土地理院が提供するデジタル地図を活用した盛り土の全国調査を行うと発表した。過去のデジタル地図と比較的新しいデジタル地図を比較。盛り土が行われた可能性がある箇所を洗い出し、8月下旬をめどに関係省庁や自治体に提供する予定。
盛り土とは、山間部を宅地造成する場合、地盤を高くして土地を利用しやすくするため、斜面に盛る土砂のこと。宅地造成等規制法では事業者が盛り土をする場合、通常は各自治体に申告した上で、地盤の補強工事なども合わせて行うことを定めている。
しかし熱海市で土石流が発生した場所では、事業者が自治体への申告なしに盛り土を行っていたことや、産業廃棄物を含んだ土砂の持ち込みがあったことなどが発覚。静岡県によれば、盛り土の崩落が土石流の起点になった可能性もあるという。こういった背景から、赤羽一嘉国土交通相は全国の盛り土を調査する方針を6日に示していた。
今回の調査では、国土地理院は2000年ごろまでに作成された全国の標高データと、上空からレーザー光を照射し、反射までにかかる時間から地形を調べる「航空レーザー測量」を使って、2008年以降に計測した標高データを比較。標高が変わっている箇所を抽出し、違法に開発された場所がないか各自治体に精査してもらう。
ただし国土地理院は基本的に、航空レーザー測量を活用した調査を各自治体に依頼する形で行っており、場所によっては作業が完了していないため、比較ができない場合があるとしている。国土地理院は各自治体の調査が進んでいない背景について「航空レーザー測量はコストがかかる測量法。自治体の財政力によっては、調査が沿岸部や都市部にとどまっている場合がある」としている。
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