リモート監視の普及と懸念 Webカメラでテレワークが監視される時代:ウィズコロナ時代のテクノロジー(1/3 ページ)
このコロナ禍はまだしばらく続きそうだが、テレワークで重要なのが、プレゼンスと監視の問題だ。
前回はCOVID-19パンデミック後のオフィス再開と、それに対するテクノロジーの支援について考えたが、残念ながらデルタ株を始めとした変異株の流行により、感染が終息する兆しは再び失われてしまった。
世界的に見ても、リアルでのコミュニケーションが無条件で認められるようになるのは、しばらく先になりそうな状況となっている。東京都も7月に「テレワーク等による出勤者数の7割削減」を実現するよう企業に要請しており、リモートのコミュニケーションをさらに徹底することが求められている。
テレワークを支えるテクノロジーも、さらなる進化を遂げなければならない。しかしそれがどのような方向性であるべきかについては、議論の余地がありそうだ。
高度化する「リモート監視」
企業がテレワークの導入をためらう理由の一つが、従業員が「サボる」のではないかという不安だ。人材シンクタンクのパーソル総合研究所が実施した調査によれば、上司の40%がテレワーク中の部下に対して「仕事をサボっているのではないかと思うことがある」と回答している(関連記事)。
同調査のテレワーカーに対するアンケートでも、「上司や同僚から仕事をサボっていると思われていないか不安」と答えた割合が38.4%に達しており、この回答はテレワーカーが不安に感じることの上位にランクインしている。
既にこうした不安に対しては、各種の対策が講じられている。PCやネットワークにログインした時間を拾う、メッセージツールのプレゼンス状態(Skypeで言えば「退席中」や「会議中」など)を確認するといったシンプルなものから、使用しているアプリケーションのログやブラウザの閲覧履歴データを収集する、キーボードのタイピング操作を記録する、さらには一定間隔で画面のスクリーンショットを撮るといった専用のツールを使うものまで、その内容も多様だ。
実際に英国の調査では、調査対象となった企業の12%が、既に何らかの形で従業員の遠隔監視を行っているとの結果が出ている。
さらに最近では、AIを活用したより高度な「監視」を可能にする製品も登場している。例えばフランスのTeleperformanceが提供するCloud Campusという製品は、テレワークの実現を支援するプラットフォームであると同時に、従業員の管理やセキュリティ対策としてのモニタリング機能を有している。
その際、従来型のデータ収集・分析に加えて、テレワーカーが作業する空間(彼らの自宅の一室など)にWebカメラを設置してもらい、そこから得られる映像データをAIに解析させるという対応を行っている。
こうした高度な監視は、単なる「サボり防止」だけでなく、機密情報をオフィス以外の場所からアクセス可能にする上でも有効であることが指摘されている。従業員の怪しい行動が検知された場合には、すぐに機密情報へのアクセスや、端末自体をシャットダウンしてしまえば良いわけだ。従って、テレワーク可能な業務を広げる点でも、「リモート監視」技術の拡充は望ましいといえるだろう。
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