開発環境をAzureに移行したらテレワーク中の出社が減りました 「オンプレはもう限界」──ゲーム企業が成し遂げたクラウド移行の舞台裏(3/3 ページ)
開発環境をクラウド化したゲーム企業。Azureを中心に、開発基盤をマルチクラウドで構築した結果、トラブル対応の手間が減り、テレワーク中の出社が少なくなったという。“出社が減るクラウド移行”の舞台裏を中心人物に聞く。
クラウド移行で便利になった2つの点
Azureを中心に、3種類のIaaSを組み合わせて構築した第2開発部の新しい開発環境。この新環境では、旧環境に比べて便利になった点が大きく分けて2つあるという。
一つは、Azure DevOpsを採用したことで、オンプレ環境では1日1回だけしかできなかったビルド作業を何度もできるようになったことだ。新環境ではAzureのサービス「Azure仮想マシンスケールセット」を活用。ビルドに必要なソフトウェアをインストールした仮想サーバを、コストをかければ何台でも自動スケーリング可能にした。
オンプレ環境では1日に1回、夜間にしかビルドできなかったが、新環境では日中に20〜30回のビルドが可能に。これにより、負荷分散に加え、ビルド後に見つかるエラーへの迅速な対応が可能になったという。
もう一つは、リモートでトラブルに対応できるようになったことだ。
「どうしても対応しなくてはいけなくなった場合、クラウドならリモートでも対応できる。トラブル対応の出社も最近はほとんどない。移動時間がなく、即時対応できるのも大きい」(戸張さん)
一方で問題点もある。ゲームスタジオでは昨今、米国や欧州に住む外部人材の起用が増えているが、新しい環境ではAzureの国内リージョンを使用しているため、海外からアクセスすると遅延が大きくなる傾向にあるという。
この問題を解決するため、同社は年内をめどに海外リージョンにもサーバを設置。仮想ネットワーク同士を接続するAzureの機能「VNETピアリング」を活用し、海外リージョンのサーバをミラーリングできるようにする方針だ。
Unity対応や他部署への展開も検討
IaaSの活用により、トラブルへの対応力を上げた第2開発部。現在はUnreal Engine限定の開発基盤として運用しているが、今後はゲームエンジン「Unity」にも対応を検討中だ。今回の移行のノウハウを活用し、DevOpsが可能な環境を他部署にも展開したいという。
「社内にはUnityしか扱っていない部署もある。Unity対応に必要なのは、仮想サーバにインストールするソフトウェアの変更だけなので、開発環境を使い回せるようにしていくことで、少なくとも(自分が所属する)第1事業本部ではDevOps環境を標準化していきたい」
【編集履歴:2021年9月21日午後3時55分 当初、タイトルなどで「開発環境をAzureに移行したら休日出勤が減りました」としておりましたが、追加の取材に基づき変更しました。またHelix Coreの提供元を米Epic Gamesとしておりましたが、正しくは米Perforceだったため訂正しました。】
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