スマートスピーカーの成功を見ずに終わった「Chumby」が見せた可能性:デジタル・イエスタデイワンスモア計画(3/3 ページ)
ぬいぐるみのような皮に包まれたChumby、覚えていますか?
据え置きの必然性を手に入れた「スマートスピーカー」
月日は流れ、スマートフォンが1人1台レベルで普及した現在では、Chumby的な要素を持った製品が少しずつ普及している。それはスマートスピーカーだ。もともとは音声操作が中心だったスマートスピーカーも、最近ではタッチディスプレイを搭載したスマートディスプレイが主力となりつつあり、外観や操作体系もChumbyと非常に近い。
スマートフォンほどではないものの、徐々にスマートスピーカーが受け入れられつつあるのは、先にスマートフォンが普及しているという影響は大きいだろう。
アプリで機能をカスタマイズしていくスマートフォンのコンセプトが世の中に認知されたことで、「スマートフォンのような感覚で扱うスピーカー」という、ざっくりとしたイメージが持てたのは、そもそもガジェットを表現する言葉にも困っていたChumbyとは小さいようで大きな違いだ。
前述の「据え置き」ならではの理由についてもスマートスピーカーは「ならでは」の魅力を身につけた。それは音声操作と家電コントロールだ。
Chumbyの操作は本体に搭載されたタッチディスプレイで操作する必要があった。タッチ操作は直感的で分かりやすい操作方法ではあるものの、指で操作するのであればスマートフォンと操作するのと変わらないともいえる。
一方、スマートスピーカーは音声によって「手がふさがっていても」「離れた位置からでも」という、スマートフォンにはできない操作が可能だ。タッチ操作が不得手な子どもや高齢者でも音声なら操作できるという点で、スマートフォンとは違ったユーザー層にアプローチできるというメリットもある。
さらに家電コントロールが可能になり、スマートスピーカーはスマートフォンとは別の存在感を高めることとなった。布団に入ったままで部屋の電気を消す、出社前に着替えながら天気予報を聞くなど、これら「ながら」で操作できるのはスマートスピーカーならではの利点だ。
自由度の高さという点でも、スマートスピーカーが搭載するAIアシスタント向けの機能は開発者向けの仕様が公開されており、ユーザーやサードパーティーが自由に開発することも可能だ。こうしたオープン性により、近年ではさまざまなメーカーの製品やWebサービスがスマートスピーカーに対応している。
開発の自由度など差はあれど、現状のスマートスピーカーの進化は、10年前にChumbyが目指していた世界なのではないだろうか。
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