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コロナ禍の宅配量21億個 ヤマト、業務増でもコスト削減 「勘と経験からデータに基づいた経営へ」(2/2 ページ)

宅配大手のヤマト運輸がデータに基づいた経営に舵を切った。コロナ禍で宅配需要が伸びる中、輸送コストを前年比約10%削減するなど成果を上げている。デジタルデータ戦略担当の執行役員に取り組みを聞く。

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「勘と経験からデータに基づいた経営」への転換

 ヤマト運輸がデータ活用を進める背景には、ECの伸びやテクノロジーの進化など社会情勢の変化を受けて「このまま(従来のやり方を続けるの)ではヤマトが立ち行かなくなる」という危機感が経営陣の中にあったと中林執行役員は話す。そこで17年から経営陣一丸で議論を進め、データ活用やIT投資を基本戦略に据えたYAMATO NEXT100を発表した。

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ヤマトグループが目指すデータを活用した経営

 中林執行役員は「経営のスピードに(ヤマトの)デジタル活用がついていく必要がある。そのためのデジタル基盤としてYDPを用意した」と説明。「今まで勘と経験に基づいていた経営や現場業務を、データに基づいた経営や業務に変えていく」

 加えて、これまでグループ各社のデータやITの仕組みがサイロ化してサービス提供のボトルネックになっていたという。YDPに統合することでこうした課題の解決を狙う。

 「効果がないのにデータだけかき集めて統合しても意味がない。現在は(コスト構造の見直しにつながる)優先度の高いデータから進めることで、短期的な効果を狙いつつ、中長期的にグループ全体で有効活用できるデジタル基盤の構築を進めている」(中林執行役員)

「デジタル基盤」の中身はIT環境+人材

 企業がデータ活用を進めるには、データ分析の担当者だけでなく経営陣も含めた会社全体のITリテラシー向上やスキルアップが重要だと中林執行役員は話す。例えば、数カ月先の荷物量を予測する場合、人員やトラック配置の権限を持つ人も機械学習について理解しておく必要があるというわけだ。

 YAMATO NEXT100で構築を目指すデジタル基盤は、YDPのようなIT環境だけでなく、組織体制や人材も含んでいる。こうした考えから、ヤマトグループを対象にした教育プログラム「Yamato Digital Academy」を21年4月にスタートした。学生向けのデータコンペやハッカソンも開催。企業のデジタル人材確保・強化もデータ活用に欠かせないという。

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Yamato Digital Academyの概要

経営資源は人・モノ・金、そしてデータ

 中林執行役員はデータサイエンティスト協会の理事としても活躍する。企業経営にデータを活用するメリットを聞くと「逆に(データを)使えないと生き残っていけない」と答えた。人・モノ・金と同じくデータも経営資源として経営陣がどう扱うかが重要だという。

 「米Googleや米Appleなどの大手ITが直接、競合相手になることは少ないが、間接的なプレイヤーとして存在する。そういった相手と肩を並べ、国際競争力を維持するためにもデータ活用をするべきだ」(中林執行役員)

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