10倍に膨れたAWS運用費をどう減らす? ユーザー急増のnoteが挑む「コスト削減作戦」の裏側(2/2 ページ)
巣ごもり需要によってユーザーが急増、これに伴い提供基盤であるAWSの運用コストも約10倍になったというnote。膨れ上がったコストの削減に取り組む「SREチーム」に、無駄を削減する具体的な手法を聞く。
AWSの機能・サポートも積極活用、自動化・効率化を推進
こういった取り組みに加え、noteではAWSが提供する機能やサポートを積極的に活用し、コストの可視化・分析を進めている。
例えばイレギュラーな理由によるコスト増加の検知には、20年12月にリリースされた「AWS Cost Anomaly Detection」(コスト異常検出)という機能を活用。この機能は機械学習を使って、過去の傾向から外れた異常なAWS利用コストを自動検出し、ユーザーに通知してくれるものだ。これを使うことで通常の利用傾向とは異なるイレギュラーなコスト発生を自動的に検知し、その要因をピンポイントで詳しく調査できるようになったという。
システム運用などの通常業務と、コスト削減に向けた業務を両立させるため、AWSのサポートサービスも活用している。同社は21年6月から、AWSのサポート契約を最上位メニューの「AWSエンタープライズサポート」へ切り替えた。これにより、AWSの専任担当者が利用コストを詳細に分析して、月1回のミーティングで報告してくれるようになった。
「私たちは普段、システムの運用や品質管理の仕事をこなしながらコスト管理も行っているので、細かな集計・分析作業の時間をなかなか確保できない。その点エンタープライズサポートでは、AWSの担当者が利用コストの内訳や傾向、問題点などを細かく分析して報告してくれるので、とても助かっている」(加藤さん)
「コスト=悪」ではない
加藤さんによればこうしたさまざまな施策を実行してきたことで、AWSの無駄な利用コストは確実に削減できているという。ただし、トラフィック自体は現在も増え続けており、増加する運用コストと削減できたコストの切り分けが難しいため、具体的な金額は算出してない。
しかも、実はコスト削減に当たっての明確な数値目標は特に設けていないという。加藤さんは理由について、必要なコストまでもを悪と捉えないようにするためと話す。
「サービスの成長や改善には必然的にコストが伴うため、『コスト=悪』という捉え方はしないようにしている。むしろ、必要なコストを必要なところできちんと使うことが大事。この『必要かどうか』を正確に判断するための道具として、今回の可視化の仕組みを今後さらに有効活用していきたいと考えている」(加藤さん)
今後は無駄なコストの可視化や対策の取り組みを継続していくとともに、チームごとの利用コストを自動的に通知する仕組みを用意するなど、さらにAWS利用コストを詳しく可視化・分析していく方針だ。
「これまでのコスト削減の取り組みを通じて、組織体制やサービス規模に応じた適切なAWSの使い方を考えることが重要だと痛感した。今後もサービスの成長に応じて、適宜AWSの利用の在り方を見直しながらコストの最適化を図っていきたいと考えている」(中村さん)
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