急成長中のSansanに学ぶ、B2B SaaS開発組織の広げ方 3度の体制変更を経てたどり着いた答え(2/3 ページ)
オンラインで名刺交換できるSaaS「Sansan」。年々売り上げを伸ばす同サービスだが、事業拡大に伴い開発組織も大きくなることから、組織の編成を何度も変えて対応しているという。業績を伸ばすSansanの開発組織は、これまでどのように編成を変えてきたのか。
最初は「KPIごとにチーム分け」に変更 しかし再び課題表出
こういった課題感や、所属人数が80人程度まで増えたことを受け、Sansanでは18年2月に開発組織の編成を変更。組織全体で共通のビジョンを持てるようにするため、メンバーをKPIごとにチーム分けする、どんなプロジェクトを立ち上げるかはチーム全体で決めるといった仕組みを新たに採用した。
この変更によって、チーム間でKPIが共有できるようになり、メンバーが職種を問わず共通の目標に向かって業務を進められるようになった。
しかし今度は各メンバーにどういうKPIを設定すれば、より良い機能や製品を作れるのかが難しくなった。
「B2B SaaSにはステークホルダーが複数いるため、(KPIとなる)変数がさまざまにある。そんな中で、製品や機能をどのようにKPIと結び付けるのか、ここに非常に悩んだタイミングだった」
目標などの形式を統一、製品リリースが迅速に それでも浮かぶ課題
KPI策定で生まれた新たな課題や、さらに100人規模まで増えた所属人数を受け、Sansanは19年3月に再び開発組織の体制を変更。新しい体制では、バックログ(ユーザーの要望などのうち、未着手の案件)のフォーマットなどを組織全体で統一した。
PdMが見積もりなどと一緒にバックログを責任者に提出するようにすることで、組織が抱える業務の優先度をマネジャーが整理しやすくし、これまでより迅速に製品や機能をリリースできるようにした。
チーム分けは、バックログを基に立ち上げたプロジェクトに応じて、エンジニアやPdM、デザイナーからなるチームを都度編成して起用する形に変更。KPIはリリースする製品・機能の量や、NPS(機能や製品を、顧客に10段階で評価してもらった指標)に統一することで、組織全体が共通の目標を意識できるようにした。
この変更により、顧客からの評判を集められる機能や製品を短期間で開発できるようになった。バックログの形式を統一したことで、営業部門とデータの共有をしやすくなり、上長への報告を円滑化できるといった利点もあった。
しかし、これでも新たな課題が見えた。リリースする製品・機能の量をKPIに設定したことで、それぞれの企画がおろそかになることがあり、十分に顧客のリサーチがなされないまま世に出てしまうことがあった。
関連記事
- 「働き方改革はゴールじゃない」 名刺管理のITベンチャーSansanが「社内メール・固定電話廃止」を実現できた理由
常に「新しい働き方」を模索してきた名刺管理のITベンチャーSansan。画期的な施策を進めてきた同社の発想の根幹には何があるのか。 - 名刺管理のSansan、「ほぼ手作業」だったデータ入力はどう進化した? CTOが語った軌跡
「AWS Summit Tokyo 2019」のセッションに、Sansanの藤倉成太CTO(最高技術責任者)が登壇。創業時(2007年)から現在までの歩みを振り返った。かつてはオペレーターが名刺情報を手入力していた同社は、データ化の手法をどう進化させてきたのか。 - 暴力団・総会屋・詐欺集団を名刺で見破る! Sansanが新機能“反社チェック”を開発する狙い
名刺管理サービスを手掛けるSansanが、反社会的勢力のチェック機能を開発している。開発には、リスクがある企業のデータベースを持つ金融データプロバイダー、英Refinitivが協力している。Sansanとリフィニティブ・ジャパンの担当者に、開発の狙いを聞いた。 - 不便で仕方ない「住所入力の全角・半角問題」はなぜなくならないのか 専門家に原因を聞く
郵便番号や電話番号は半角なのに、住所の番地では全角での打ち込みを求められる「住所入力の全角・半角問題」。不便で仕方ないこの仕様はなぜなくならないのか。専門家に理由を聞く。 - 相次ぐ漏えい事件、本格的に狙われ出したSaaSベンダー 見過ごされてきた“死角”への対策は
クラウド化の波やコロナ禍の影響により、Webベースの業務アプリケーションが普及したため、悪意を持った第三者にとっては攻撃しやすい状況にある。今回は、最近漏えい事件が相次いでいる「業務アプリ」に焦点を当て、Webセキュリティを解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.