急成長中のSansanに学ぶ、B2B SaaS開発組織の広げ方 3度の体制変更を経てたどり着いた答え(3/3 ページ)
オンラインで名刺交換できるSaaS「Sansan」。年々売り上げを伸ばす同サービスだが、事業拡大に伴い開発組織も大きくなることから、組織の編成を何度も変えて対応しているという。業績を伸ばすSansanの開発組織は、これまでどのように編成を変えてきたのか。
PdM・デザイナー切り出しで営業部の連携強化 開発プロセスも刷新
組織内でKPIを統一することで、目標についての課題は解決したものの、今度はKPI自体の問題点が見えるようになったSansan社。さらなるメンバーの増加を受け、同社は21年7月にも体制を変更した。
今度はPdMやデザイナーなどで構成される「プロダクト組織」と、エンジニアからなる「技術本部」の2組織から構成される「マルチプロダクト組織」という体制を採用した。PdMやデザイナーを切り出すことで、営業部門などとの連携をさらに取りやすくした。
営業部門などと密に連携することで、開発の状況やKPIの達成状況などを共有しながら業務を進められるようになり、機能や製品を成功につなげやすくなったという。
「B2B SaaSにおいては、実際に機能や製品を使うユーザー以外にも、導入を決める意思決定者や、設定の管理者など多くの関係者がいる。こういった関係者の課題を理解して製品や機能をリリースし、その上で(連携を取った)営業など関係者を動かしたから結果を出せた。このように、営業などのビジネスと開発組織が連携することで、より大きな成果を生めたと感じている」
製品・機能の企画がおろそかになっていた前体制の反省を踏まえ、開発のプロセスも刷新した。これまでは企画の一部と実装を同時に進めていたのに対し、新しいプロセスではエンジニア、デザイナー、PdMが共同で顧客のリサーチなどを行う「企画フェーズ」と、エンジニアが機能や製品の設計・実装などを行う「実装フェーズ」を分割することで、質と量の両立を図っているという。
「事業や組織の課題に恐れず向き合うことが大事」
3回の体制変更を経て、マルチプロダクト組織にたどり着いたSansan。組織の編成を変えるたびに課題が現れ、都度対応してきたが、杉原さんは「これまでの組織変更に間違いがあったとは感じていない」と話す。
「組織を変えることでいいことも悪いこともあった。しかし、50人のときのやり方のままで今の成長を維持できたかといえば、そうではないと思う。そのため、今の事業や組織の課題を正しく認識し、変化を恐れず向き合うことが大切だと感じている」
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