BALMUDA Phoneには何が欠けているのか 「デザイン」と「新規参入」のジレンマ(3/3 ページ)
テクノロジージャーナリストの西田宗千佳さんが、バルミューダ初のスマートフォンが抱える問題点を分析した。
「スマホの外で勝負をかける」手もあったのでは
スマホに新規参入するメーカーにとって、ハードルはたくさんある。京セラのように経験豊かなパートナーを国内に見つけられたのはバルミューダにとってプラスだったろうが、そこでできることもまた、限られてくる。
現実的選択は悪いことではない。
ビジネス的に見れば、BALMUDA Phoneは、大量に在庫が残ってしまう事態さえ防げれば、ソフトバンクとの関係もあってシュアな状態で終えることができるかもしれない。うがった目で見れば、「価格高めで保守的なハードウエア」はそうしたビジネスありきにも見える。だが、きっと彼らはそう思われたくないはずである。
問題はそれをどう見せるかだ。
スマホの中だけで説得力のある違いを作れないなら、「外」を生かしてもいい。
もっともわかりやすいやり方が「価格」だ。パーツから見える納得力の高い値付け、というのはそういう部分だと思う。BALMUDA Phoneがせめて6万円台で買えていれば、形状の特徴が「納得のデザイン」になっていた可能性は高い。
売り方もあるだろう。
今回の施策の中でも感心したのは、直販の場合、スマートフォンであっても、同社の特徴である「30日返金保証キャンペーン」をやったことだ。そうした施策は、企業としての一貫性を考える上で重要な点と言える。
IoT的なものでなくても、同社の家電との連携があっても良いのかもしれない。BALMUDA Phoneの中からしか読めないレシピが提供されるとか、食材通販があるとか、サポートを受けるときに手間が1つ2つ減るとか、そういう話でもいいのだ。
筆者は、スマホ初参入のバルミューダに、「ハードの特異性」でもともと期待していなかった。楽しみにしていたのは、そういう「なぜスマホまでバルミューダにするのか」という理由づけであり、演出だった。それがあまり見えなかったのは残念なことである。
個人的には、寺尾社長の言うように「すでに複数台の開発に着手」「スマホとはいえないようなサイズのものも」ある、ということなら、あえてスタンダードよりそちらを先に出し、すぐにスタンダードもアピールする……というような、順番を入れ替える作戦が良かったのではないかと考えている。
同社がデジタル機器で長くやっていくつもりなら、別にスタンダードから始める必要はない。
スタンダードには信頼が必要だ。信頼は、そのままストーリーになり、自社製品に込められた思いに付加価値をつけるドレスになる。
スタンダードこそ、同社が本当の意味で満を持して切るべきカードであり、それは初手ではなかったのではないか、とも思うのだ。
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