東大、フライングレシーブをするヒト型ロボットを開発 成功率は80%:Innovative Tech
東京大学の研究チームは、飛んでくるボールを前方にジャンプして打ち返す空気圧式ヒューマノイドロボットを開発。斜め上前方へジャンプし両手を前に出してボールを打ち返す、バレーボールでいうフライングレシーブのような動作をする。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
東京大学大学院情報理工学系研究科知能システム情報学研究室(國吉・新山研究室)の研究チームが開発した「Immediate Generation of Jump-and-Hit Motions by a Pneumatic Humanoid Robot Using a Lookup Table of Learned Dynamics」は、飛んでくるボールを前方にジャンプして打ち返す空気圧式ヒューマノイドロボットだ。
真上にジャンプするのではなく、斜め上前方へジャンプし両手を前に出してボールを打ち返す。その姿は、バレーボールでいうフライングレシーブのようだ。
ロボットは、飛んでくるボールが落ちる場所にジャンプし、両手を振ってボールを跳ね返すタスクを行う。そのためには、ボールを検出し、その軌道を予測し、協調動作を行い、ボールが着地する前にボールを打つ一連の動きをしなければならない。
この一連の動きを生成するために研究チームは、「IMoLo」(Immediate Motion generation using a Lookup table of learned dynamics)というアーキテクチャを開発。IMoLoを使うと、タイミングよく打撃位置に手を到達させる動きをルックアップテーブルから生成する。
IMoLoが実際に効果的なのかを検証するため、空気圧アクチュエータ「SIP-CC」(Structure-integrated pneumatic cable cylinders)を使ったヒューマノイドロボット「Liberobot」を開発し実験をした。Liberobotの高さは1163mm、幅は400mmで、ケーブル類を除いた重量は7.4kg。計8つの関節は可動域150度までで動作する。
実験では、約5m離れた2箇所からボールを異なる方向に20回投げ、ジャンプ&ヒットモーションを行った。ボールにはマーカーを付け、部屋に設置された11台のモーションキャプチャーカメラで動きを追跡し位置を常に把握する。
結果、飛んできたボール20回のうち16回を跳ね返し、80%の成功率を示し、IMoLoを使用してジャンプ&ヒットモーションが効果的に行えることを実証した。その際、手を跳ね返すときの位置の誤差は平均値が12.9mm、標準偏差が9.4mmであった。
一方でボールの予測軌道の誤差は、0.25秒前に予測したボールの位置の場合、平均値が46.1mm、標準偏差が32.0mmであった。このようにボールの予測誤差は手の誤差よりも大きいことから、成功率を下げている要因は主にボールの予測誤差にあると示唆された。
Source and Image Credits: K. Tanaka, S. Nishikawa, R. Niiyama, and Y. Kuniyoshi, “Immediate Generation of Jump-and-Hit Motions by a Pneumatic Humanoid Robot Using a Lookup Table of Learned Dynamics” IEEE Robotics and Automation Letters, Volume: 6, Issue: 3, July 2021, pp.5557 - 5564, DOI: 10.1109/LRA.2021.3076959
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