乙武さんが50mを歩行、ソニーのロボット義足で実現 目標は「サッカーができるようになりたい」
ソニーCSLは、同研究所が開発したロボット義足を、「五体不満足」の著者でもある乙武洋匡さんに装着してもらい歩行にチャレンジする「OTOTAKE PROJECT」の成果を披露した。発表会では、50mの歩行にチャレンジ。目標を大きく上回る成果を見せた。
ソニーCSLは9月28日、「五体不満足」の著者でもある乙武洋匡さんに電動義足を装着してもらい、歩行にチャレンジする「OTOTAKE PROJECT」の成果を日本科学未来館で披露した。乙武さんは休憩を挟みつつではあるが、目標の50mを大きく超える距離を歩いた。
OTOTAKE PROJECTは2018年4月にスタート。ソニーのロボット義足技術を使って、両手両足がない四肢欠損の乙武さん向けに2本の電動義足を開発した。負担を減らすため、必要なトルクを確保しつつモーター部分は1.2kgに抑えた。義足全体の重さは片脚で5kgを切るなど軽量化している。
成果発表会では、50mの距離を目標に歩行を披露。途中休憩を挟みつつも無事ゴールした他、さらに20〜30mほど離れた会場の端まで完走した。報道陣から感想を尋ねられた乙武さんは「最高です。僕一人でここまで来たわけではなくて、チームで試行錯誤を重ねた。それがこの距離に表れたので胸がいっぱいです」とコメントした。
「車椅子より二足歩行が上」ではなく、あくまで選択肢
乙武さんは、二足歩行について「あくまで選択肢」と語る。「車椅子よりも二足歩行が上というイメージはなく、オプションを増やしたい。多くの方が二足歩行で生活する中で、車椅子であったり歩き方が違うとつい視線を向けてしまう。仕方のないことだが向けられる方はストレスになる」と述べ、「街の中に溶け込みたいニーズがある。そのためのオプションを実現していく」とプロジェクトの意義をアピールした。
同プロジェクトは成果発表会をもってミッションを完了する予定だったが、乙武さんは「まだやめられない」と続ける意欲を見せる。今はベニヤ板を重ねて2.5cmの段差を登る練習を始めたという。義足を開発したソニーCSLの遠藤謙さんも「乙武さんは課題先進人物。手足がない状況下で不便なものを解決するテクノロジーが世の中にないことをあらわにしてくれる。当事者の協力はとても大事。できるところまでやりたい」と意気込んだ。
報道陣から、歩けるようになったら何がしたいかと聞かれた乙武さんは「サッカーができるようになりたい」と明かした。本プロジェクトに参加しており、テクノロジーの社会実装を目指す「xDiversity」のメンバーでもある筑波大学准教授の落合陽一さんも「2025年の大阪万博までに走る乙武さんの姿を見たい」とプロジェクトにエールを贈った。
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