まぶたを閉じても映像が見える装置を体験してきた 「目を瞑ることを見つめ直す」:DCEXPO 2021
東京大学の村本剛毅さんが「DCEXPO 2021」に、まぶたに光を投影し、目を瞑っていても映像を見せられる装置「Imagraph」を出展した。この装置を通せば「目を瞑ることを見つめ直す」ことができる。
東京大学の村本剛毅さんは、展示会「DCEXPO 2021」(幕張メッセ、11月17-19日)で、まぶたに光を投影し、目を瞑っていても映像を見せられる装置「Imagraph」を出展した。暗いブースに入り、装置を付けると、目を瞑っているのにオーロラのような映像が問答無用で流れ込んでくる。
Imagraphは、電光掲示板と光ファイバーを組み合わせ、まぶたを透かして映像を見せる装置。光がまぶたを通る際の色の変化を加味して映像の色味を調整することで、作り手の思い通りの映像を見せられる。産業やコンテンツ制作に生かすものではなく「目を瞑るということを見つめ直すための機械」(村本さん)という。
まぶたは完全に光を遮断できるわけではなく、周囲の風景などがぼんやりと認識できる。そんな目を瞑ったときの視覚に対して、村本さんは昔から興味を持っていたと話す。
Imagraphではその状況を再現。目を瞑り外部から情報を遮断する“態度”のまま、映像を見ることで、どこまでが外部から来た情報で、どこまでが自分で作ったイメージなのかが曖昧なメディアを考えられないかと思い、開発したという。
逃げ場なく、明るい映像が見え続ける
記者もImagraphを体験してみた。4畳半程度のブースは四方をパネルで囲まれて暗くなっている。その中央に黒いベッドがあり、そこに横たわって装置を目に当てると映像が始まる。
見える映像はぼんやりとした色が滑らかに移り変わっていくオーロラのようなもの。はっきりと人物や物体が映るわけではない。まぶしい日差しを浴びてとっさに目を瞑ったときに見える光がカラフルになったような感覚だ。
ただ、映像以上に不思議で面白かったのが、映像がまぶしいので目を瞑ろうと思っても、すでに瞑っているのでそれ以上どうすることもできず、明るい映像を見続ける体験だ。逃げ場がなく、思った以上につらい。
目を瞑りながら映像を見るのは確かに不思議だが、同時に芸術的でもある。目を開けて“見ている”のとは違い、半強制的に“見えている”状況で、確かに光や色は感じるが本当にちゃんと見えているのかと聞かれると「どうなんだろう?」と腑に落ちない感覚に陥る。
「ディスプレイは本来目に見えるものならほとんど何でも表現できるはずだが、Imagraphで見える映像は今までのディスプレイでは見たことがないようなものになっている。一人一人見え方も違う」(村本さん)
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