面接官の顔をアバター化すると緊張しない? 顔面モニター「デジタルカメン」で検証:Innovative Tech
公立はこだて未来大学などの研究チームは、面接官の顔だけをアバターに置き換えてオフライン面接をした時に、受験者が感じる緊張度について考察した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
公立はこだて未来大学平田・竹川研究室、香港城市大学の徳田雄嵩氏、慶應義塾大学lifestyle Computing Lab、Interactive Media Labによる研究チームが発表した論文「採用面接におけるデジタルカメンを用いた面接官の印象調査」は、面接官の顔だけをアバターに置き換えてオフライン面接をしたときに、受験者が感じる緊張度について考察した調査書だ。
就職活動など多数の受験者を複数の面接官が対面して審査をする場合、面接官の印象は、緊張に大きな影響を及ぼすため、公正な面接を実施するのは難しい。これまでにも採用面接における面接官の見た目(性別や人種など)と、受験者への影響に関して、その不公正さを示した研究が複数報告されている。
この研究では、面接官の見た目を変化させて公正な面接の実施を目指す。具体的には、面接官の顔面をアバターに変える「デジタルカメン」を装着した。デジタルカメンは、同研究チームが2020年に開発したフルフェイスマスクディスプレイだ。前面にはアバターの顔を表示し、装着者の表情とリアルタイムに連動してアバターの表情が動作する。装着者の顔は周囲に一切見えない。
実験では、面接官3人(10代、20代、60代)に対してデジタルカメンを使い、2種類のアバター(貫禄ある顔、優しい顔)に変換し、面接官が受験者172人(20〜21歳の大学生)に与える緊張度をアンケートによって調査した。比較するため、受験者にはデジタルカメンを使用しない場合と貫禄ある顔に変換、優しい顔に変換した場合で各面接官3人とそれぞれ面接してもらう。
面接は、6つの質問を投げかける1分ほどの動画を見てもらった。音声は面接官本人の声であり、デジタルカメン適用時にも音声の加工はしていない。面接官に抱いた緊張度について、5段階の尺度で評価してもらった。
結果は、優しい顔のアバターに変換した方がデジタルカメンを使用しない素顔より、面接官3人に対する緊張度が大きく減少した。貫禄ある顔のアバターだと、60代の面接官に対してのみ緊張度が減少した。このことから、アバターに変換する方が受験者の緊張が緩和すること、貫禄ある顔のアバターよりも優しい顔のアバターの方が緊張感が軽減することが示された。
今後の課題として、女性の面接官にアバターを適用する場合や、受験者の年代による緊張度への影響の検証することで、緊張度の操作の限界についての解明を目指したいとしている。
出典および画像クレジット: 野口 紅葉, 竹川 佳成, 徳田 雄嵩, 杉浦 裕太, 正井 克俊, 平田 圭二「採用面接におけるデジタルカメンを用いた面接官の印象調査」『エンタテインメントコンピューティングシンポジウム論文集』 2021巻, 15 - 19ページ, 2021-08-23
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