デスクワーク中の貧乏ゆすりでストレスを計測する靴型デバイス 足の向きや動き、圧力から判断:Innovative Tech
ニュージーランドのオークランド工科大学などの研究チームは、着席時の足の姿勢や動きなどからストレス状態を検出するためのシステムを開発した。座りっぱなしで仕事をする人のストレスを足の動きから判断する。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
ニュージーランドのオークランド工科大学とドイツのTechnical University of Applied Sciences Lübeckの研究チームが開発した「StressFoot: Uncovering the Potential of the Foot for Acute Stress Sensing in Sitting Posture」は、着席時の足の姿勢や動きなどからストレス状態を検出するためのシューズデバイスと、機械学習モデルを組み合わせたシステムだ。座りっぱなしで仕事をする人のストレスを足の動きから判断する。
ストレスを計測するこれまでの手法には、心拍の変動や脳波、筋肉の緊張、皮膚電気活動(EDA)、顔の表情などを計測する多様なアプローチがある。今回は、座っている際の足の動きと姿勢の特徴を利用して、ストレスを識別する手法を提案する。
プロトタイプは、感圧抵抗器(FSR)技術に基づく感圧インソールと慣性計測装置(IMU)を組み込んだシューズシステムから構成する。16個の圧力センサーを搭載した感圧インソールは足の圧力分布を感知し、足首に装着するIMUは足の角度や動きを計測する。バッテリーとSDカードも搭載し、ワイヤレスで約16時間の連続駆動が可能だ。
足底の圧力分布と足の角度と動きのデータを基に、学習した機械学習モデルを使ってストレスレベルを分析する。(1)前足部に大きな圧力がかかっていること、(2)圧力の中心がずれていること、(3)足先と脚全体の向きが異なっていること、(4)貧乏ゆすりのように足踏みしていること。この4つがどれくらい上昇したかでストレスレベルを決定する。学習した機械学習モデルの性能を検証したところ、平均で約87%の精度を得た。
実験では、5人の被験者にプロトタイプを装着してもらい、着席した状態でPCを使ってパズルゲームを解いてもらった。その際、横にはネガティブなコメントをするオブザーバーも同席した。
結果、ストレス状態にあった全ての被験者において、足の向きが変化し、床への足の付き方が異なることが確認できた。また、2人の被験者には緊張して足を震わせたり足踏みしたりする様子を観察できた。
機械学習モデルによって算出したストレスレベルは、自己申告したストレスレベルと近しい相関関係があると分かった。この結果は、足の向きや動作がストレスを検出するのに十分な精度で使用できる可能性を示唆した。
Elvitigala, Don S., Denys J.C. Matthies, and Suranga Nanayakkara. 2020. "StressFoot: Uncovering the Potential of the Foot for Acute Stress Sensing in Sitting Posture" Sensors 20, no. 10: 2882.
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