作業中に「ツンデレ」されるとやる気は高まるか? メイドアバターで、奈良先端大が検証:Innovative Tech
奈良先端科学技術大学院大学の研究チームは、冷たい対応と優しい対応を組み合わせた動作「ツンデレ」が作業意欲にどのような影響を与えるかを検証した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
奈良先端科学技術大学院大学の研究チームが発表した論文「ツンデレインタラクション〜行動変容を目的とした計測振舞データを用いたツンデレARエージェントの評価〜」は、ツンデレ行動が作業意欲にどう影響するかを検証した調査書だ。
ここでいうツンデレとは、冷たい対応と優しい対応を組み合わせた動作を指す。実際にメイド喫茶のスタッフが行ったツンデレの振る舞いを取得し、そのデータを基にしたARアバターを設計。ツンデレ行動を与えられた被験者の作業意欲がどう変化するかを観察する。
ARアバターを作成するにあたり、メイド喫茶のスタッフに日頃の業務で行っているテンションで3種類のバージョン(ツンデレ、ツンツン、デレデレ)を演じてもらい、マイクとモーショントラッキングデバイスで音声データと32の関節位置姿勢データを計測した。
例えば、作業後に発話される言い回しは、ツンツンなら「ふん、よくやったじゃない!」、デレデレなら「お疲れさまでした!今日もいっぱい頑張って、ご主人様は世界一優秀です!」、ツンデレなら「どれだけ時間かかっているのよ!で、でも、君なりにがんばったのね」などになる。
実験では、これら計測したツンデレ要素を組み合わせたツンデレインタラクション(TDI)、優しい対応だけのデレデレインタラクション(DDI)、インタラクションがない(NOI)の3つのアクションを被験者に与えた。
被験者は光学シースルー型HMD(ここではHoloLens2を使用)を装着し、メイドの格好をしたARアバターを通してこのアクションを体験する。ARアバターはアニメ風と写真風の異なる4体を用意し、好みに合わせて選択できる。
アクションが与えられるタイミングは、作業前や作業後、休憩前、休憩後、疲れた時、集中できない時の6種類に設定。被験者の男子6人には、百マス計算をしてもらう。
被験者の継続意欲を評価するため、達成感や承認、興味、成長、責任の5種類に関する項目と、モチベーションやタスクのつまらなさの計7項目について「あまり感じなかった」から「とても感じた」までの7段階評価のアンケート結果を比較した。
実験結果は、作業中のほぼ全ての項目において、インタラクションがないよりも、ツンデレインタラクションやデレデレインタラクションのように声を掛けられる方が評価点数が高く、やる気につながったという感想が得られた。
このことは、アクションがある方が作業継続意欲に良い影響を与えている可能性を示唆する。一方で、ツンデレインタラクションとデレデレインタラクションとの違いは見られなかった。むしろ、作業前のデレデレインタラクションは応援されている気分でやる気が出たと、ツンデレインタラクションよりも良い影響を与えた。
ツンデレインタラクションでは「より自分の精神状態に合わせた強弱のあるインタラクションが欲しい」や「日頃のやる気の起きない作業に対してはツンデレシステムが向いているかもしれない」などといった感想が得られた。
このことから、利用者の性格などの特性や作業中の利用者の精神状態に応じたツンデレ行動で、やる気が出にくい作業に対する継続意欲向上に効果があるのではと、研究チームは考察している。
出典および画像クレジット: 田井中渓志, 児玉哲哉, 川瀬寛也, 澤邊太志, 神原 誠之, ツンデレインタラクション〜行動変容を目的とした計測振舞データを用いたツンデレARエージェントの評価〜, 第26回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集, 2021, 3C1-6
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