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EVの本気度を見せつけたトヨタ 8兆円かけてでもEV・水素・PHEVを全部やるワケ(2/3 ページ)

トヨタ自動車がEVに本腰だ。同社は14日に新発表の15車種を含むバッテリーEV(BEV)16車種を披露した。しかし、EVだけでなく水素、PHEVへの投資も続ける。なぜトヨタは「全方位戦略」を続けるのだろうか。

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 トヨタとEVの関わりはつい最近のことではない。92年に「EV開発部」を設置し、96年に「RAV4 EV」を市場投入している。00年には小型EV「e-com」、12年には小型EV「コムス」「eQ」も発表。何より97年には世界初のハイブリッド車「プリウス」を発表しており、もともと電動化についてはトップクラスの技術力を持っていた。


97年に発表したハイブリッド車「プリウス」

 とはいえ、欧州や中国の自動車メーカーがEV転換を積極的に進める中で、EVへの積極姿勢を見せてこなかったこともあり、「トヨタは電気自動車に及び腰」とみられることもあった。今回、BEVのフルラインアップを一挙に発表したことで、こうしたイメージを一気に払拭する狙いもあるだろう。

 BEVの生産台数を引き上げるには、EVのコアパーツであるバッテリーの確保が重要となる。特にバッテリーは今後も需要増が予想され、資材の調達がキーになるが、トヨタはそこも抜かりがない。豊田通商を通じ、バッテリーの材料は2030年分まですでに確保しているという。

全方位戦略は「脱炭素」の現実解

 自動車メーカー各社がBEVに注力する背景として、一部の市場で厳格化する環境規制への対応が上げられる。EUでは35年までにPHEVを含むガソリン車の新車販売を禁止する規制案が出ており、米国では政府が購入する自動車を35年までに全てEVとFCVに切り替える方針が示されるなど、ガソリン車廃止に向けたより踏み込んだ規制の動きもある。

 それでも、トヨタが全方位戦略を続けているのは「カーボンニュートラルを実現する現実解は、地域によって異なる」という考えが根底にあるためだ。


豊田章男社長

 EV化をCO2排出量の削減につなげるためには、その動力源となる電力をCO2排出量が少ない発電方式で作る必要がある。化石燃料を発電の主力として使っている国では、PHEVからBEVに切り替えたところで、CO2排出量が大きく削減できるとは限らない。

 また、EVの普及に向けては、急速充電器などのインフラ設備の充実が求められる。このインフラの整備状況も現状ではまちまちとなっている。欧州の一部地域や中国など積極的に進んでいるが、米国では都市部では普及が進む一方で中西部は未整備といったように、1つの国の中でも普及状況が違う国もある。

 つまり、EV化がカーボンニュートラルにつながるのかは国家の電源構成にも左右される面があり、EVが便利に使えるかは、充電インフラの整備状況などによっても変わるということだ。グローバルメーカーならではの課題感といえる。

 こうした状況を踏まえると、利用者にとって不便がない形で脱炭素化を進めるには、複数の駆動方式を平行して開発する方が現時点では有利、というのがトヨタの全方位戦略だ。BEVのみに強制的にシフトするのではなく、BEVをあくまでもカーボンニュートラル車の選択肢の1つとしてお客さまに選んでもらう。カーボンニュートラル車の正解が分かるまで、可能な限りの選択肢を残していくスタンスだ。

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