転んでもタダでは起きない Apple Watchだけじゃない、転倒検出機能が注目される理由:【新連載】プラマイデジタル(3/3 ページ)
注目されるデジタルテクノロジーをプラスとマイマスの両方から考察する、ジャーナリストの野々下裕子さんによる連載コラムがスタートしました。第1回は、Apple Watchで知られた「転倒検出機能」について。
アルゴリズム構築が鍵
ユニークなところではアパレル企業のXenoma(ゼノマ)が開発するスマートパジャマ「e-skin Sleep & Lounge」は、腰回りのセンサーと検知用のデバイスを組み合わせて転倒検出ができ、CES 2020のinnovation awardに選ばれている。
さらにSamsungの企業内スタートアップWELTは、歩行パターンから転倒リスクを予測する世界初のベルトを開発している。最新版の「SMART BELT PRO」は日本でも発売され、転倒の危機が検出されるとスマホアプリを通じて警告してくれる。歩行速度や歩幅から体調の変化を予測する研究開発は転倒検知とあわせて進んでいる。
いずれにしても、転倒検知技術の鍵になるのはアルゴリズムの構築だ。ウェアラブルデバイスの場合、加速度センサーやジャイロセンサーを組み合わせて急激な身体の動きを検知するのは可能だが、しゃがんだり腕を振り回しただけでもアラートが出てしまい、倒れたのか寝ころんだのかも判断はつきにくい。
頻繁に誤動作するため機能をオフにした時に限って転倒した……という事態を引き起こさないようにするためには、ノイズの少ないデータ収集と分析が不可欠だ。いかにデータが大事かは、Appleが15万人以上を対象に20カ月にわたる転倒検出の調査を行っていることでも分かる。
生活者の安全と健康を守る市場はコロナ禍で大きく成長し、当然のことだがAmazon、Google、Microsoftらも狙っている。転倒検出技術は高齢者向けという印象が強かったが、前述したような職場での安全対策、スポーツやさまざまなアクティビティシーン、スマートシティーなどもっと用途が広がる可能性がある。上手くいけば新しいサービスやマネタイズの創出にもつながるはずだ。
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