昔の相棒PCを「Chrome OS Flex」で蘇生 仕事にどこまで使えるか、個人と組織視点でレビュー(2/2 ページ)
「Chrome OS Flex」で、筆者がかつて使っていた“相棒PC”をChromebook化。どこまで仕事に使えるか試してみた。
Webブラウザで済ませられる仕事はこれでOK
早速仕事で使ってみる。そもそもChrome OSがあらゆるアプリをWebアプリとして使うものなので、Webブラウザだけで完結する仕事はほとんど相棒PCでこなせる。
注:執筆時点では、アイティメディアでの業務環境としてChrome OS Flexは指定されていない。そのため社内システムへのアクセスが必要ない範囲でのみ検証した
例えばWeb会議の場合、普段は会社支給のPCにインストールしたデスクトップアプリ版「Zoom」を使っているが、Webアプリ版を使うか「Google meet」で代用すれば相棒PCで対応できた。ただし、相棒PCの内蔵マイクが不調だったので、外付けのマイクが必要だった。
社内外とのコミュニケーションに使う「Slack」「Discord」も同様にWebアプリ版で代替できる。「Word」「PowerPoint」「Excel」にもWebアプリ版があるので、アカウントさえあればMicrosoftのソフトで資料も作れた。OfficeスイートについてはGoogleドキュメントやスプレッドシートなどでも代用できる。
Webブラウザ版がないソフトがあると厳しい
一方で、相棒PCではこなせない仕事もあった。Webアプリ版で代替できないソフトなどを使う業務だ。例えば記事の執筆・編集については、使い慣れたテキストエディタにWebブラウザ版がなく、いつもと同じ環境で作業できなかった。
筆者は記事作成に当たってテキストエディタ「秀丸エディタ」をいつも使っている。マクロ機能を使えば固有名詞を含めた誤字脱字の確認なども可能なことから、ライターから受け取った原稿も一度テキストファイルにしてからこのソフトで編集している。
しかし秀丸エディタにはWebアプリ版がないので、WordやGoogleドキュメントといった他のエディタで代用しなければならない。ただ、リモートデスクトップクライアント「Chrome Remote Desktop」でWindowsマシンにアクセスすれば、当然ながらWindows環境での作業が可能になる。業務に応じてシンクライアントのように使うのもありだろう。
今回は試していないが、Chrome OSではLinuxのネイティブアプリを有効化できる。開発者向けの機能になるので万人向けではないが、やろうと思えばWineなどの互換用アプリを通してWindowsアプリを動作させることも不可能ではない。
サブ機として割り切るならアリかも
実際に使ってみて、いちユーザーとしての利用シーンから考えると「サブ機として割り切るならいいかも」と感じた。以前より動作や起動は多少軽くなるし、いつも使っているソフトにブラウザ版があれば、ある程度はこれまで通り仕事ができる。早期アクセス版だからか、たまに動作が不安定なこともあったが、開発が進むにつれ改善するだろう。
ただ、あくまで「やろうと思えばやれる」だけで、全部が全部いつも通りとはいかない。例えば筆者は普段「Photoshop Elements」で記事掲載用の写真を加工・編集しているが、このソフトはデスクトップ版のみの提供だ。ブラウザで同様の機能を使いたければ、米Adobeのサブスクリプションを契約し、「Photoshop」のWebアプリを使う必要がある。
Googleフォトの編集機能などでもある程度カバーできるが、これまで通りの作業はできない。同じ現象が他の業務でもちらほら発生したので、自分の仕事環境に合わせてこれまで通りを求めるか、ブラウザから使えるツールで割り切るか決める必要がある。
とはいえ、再利用しているPCに合わせて仕事の環境を構築し直すのは手間だ。リモートデスクトップを使うにも、他にメインPCが必要になる。そもそもセキュリティ的にまともな多くの会社では、社内システムに接続するのに稟議や何らかの認証が必要になることもある。手続きなく使えばトラブルの原因にもなりかねない。
そのため、プライベートの作業やリモートデスクトップを前提にしたサブ機として割り切って使うのがちょうどよさそうだ。PCの延命になり、新しい端末を買うコストも減るだろう。
企業での活用は状況次第?
一方で、筆者のような利用者側ではなく、PCを導入・管理する側に立って考えると、不便そうな点もいくつかある。環境の復旧こそ楽だが、さすがにWindowsと比べると使い勝手がだいぶ違うので、すでにWindowsが普及している組織でメイン機として今から展開するのは厳しいかもしれない。「デスクトップ版しかないあのソフトを使いたい」という声にも対応しにくくなるだろう。
逆に、これから社員にPCを配るスタートアップなどにとっては選択肢の一つに入るかもしれない。Chromebook同様に、教育機関で子どもたちのPC環境を安価に用意するのにも使えそうだ。
リモートデスクトップの活用を前提に、テレワークを実施している企業が在宅勤務時のシンクライアントとして社員に配るといった使い方もあり得るだろう。ただ、やはり安定性の問題はあるので、ひとまずは開発が進むのを待った方がよさそうだ。
ちなみに、MacをChrome OS FlexでChromebook化するケースについては小寺信良さんと佐藤由紀子さんがそれぞれ記事にしている。試したい人は各記事を参照のこと。
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