キリンの首を再現したロボット、力強く柔軟でしなやかに動く 東工大などが開発:Innovative Tech
東京工業大学と東洋大学、東京大学による研究チームは、キリンの首を再現した多関節筋構造の空気圧駆動ロボットを開発した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
東京工業大学と東洋大学、東京大学による研究チームが開発した「Giraffe Neck Robot: First Step Toward a Powerful and Flexible Robot Prototyping Based on Giraffe Anatomy」は、キリンの首を再現した多関節筋構造の空気圧駆動ロボットだ。
体の半分くらいを占めるキリンの長い首は、体重が100kgから150kg、長さが2mある。高い木の葉っぱを食べるのに活用するだけでなく、キリン同士がけんかをする際のネッキングと呼ぶ行為でも活躍する。首を振り回し頭を相手の体に打ち付ける攻撃だ。首の関節は可動域が広く柔軟でムチのようにしなるため高い破壊力を持つ。この柔軟さは、首への攻撃の衝撃を吸収する機能も兼ね備えている。
研究チームは、骨と筋肉で構成され、パワーと柔軟性の両方を備えたキリンの首をロボットに生かせるのではと考えた。
今回の研究では、キリンの首の構造と機構を模倣し、首から上を再現した筋骨格ロボット(約1m)を製作した。単純にキリンの外観をまねしたものではなく、実際にキリンの首を解剖し、解剖学者による知見を参考にできるだけ忠実に設計している。
この機構は、実際のキリンの骨格データから3Dプリンタで造形した頭蓋骨と複数の椎骨、椎骨間の関節を接続する円盤を模した粘弾性ゴム、首を制御する筋肉を模倣したマッキベン空気圧式人工筋肉、ゴム素材とテンショナーを用いた項靭帯などで構成する。
最後の項靭帯は、キリンの頭蓋骨から首の背側を通って体幹に向かって伸びており、動く大きな首を保持する能力を担っている。人工筋肉は、頭半棘筋、頸長筋、最長筋の3つの筋肉を模倣する。
動作性能の試験では、人工筋肉からなる多関節筋構造が協調的に動作し上下左右に動くことを確認した。測定した第1胸椎と第2胸椎の間の関節可動域は、ピッチ方向に±4.54度、ヨー方向に±20.5度と、実際のキリンと同様に広い関節可動域が得られた。また外部から首にある程度の衝撃を与えても、衝撃を吸収し倒れず保持できることを示唆した。
Source and Image Credits: A. Niikura et al., “Giraffe Neck Robot: First Step Toward a Powerful and Flexible Robot Prototyping Based on Giraffe Anatomy,” in IEEE Robotics and Automation Letters, vol. 7, no. 2, pp. 3539-3546, April 2022, doi: 10.1109/LRA.2022.3146611.
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