リコーの360°カメラ「THETA X」登場、国内はネット直販中心に 業務用は“SaaS+a Box”展開(2/2 ページ)
リコーが「THETA(シータ) X」を国内で発表した。4月からの流通が変わるため、一般ユーザーは直販サイトで購入するケースが中心になりそうだ。
THETA Xは「お仕事THETA」だが個人利用でも魅力的
THETA Xは海外では3月に発売しているが、日本での発売時期は5月中旬とちょっと先になる。その理由は新しいECサイトの立ち上げに合わせたから。販売予想価格は約11万円(税込)。ハイエンド機の「THETA Z1」より少し安い。
全体の縦長のデザインや2つの円周魚眼カメラを使って360度画像をワンショットで撮影するという基本構造は従来のTHETAと同じだが、製品としてはかなり違ったものになっている。
一番のポイントは操作系。完全に単体で使えるようになった。
初めてタッチパネルモニターを搭載したのだ。2.25型とボディサイズを考えると大きめのサイズで、中はAndroidベースのOSで動作しているため、操作感もすごくいい。
タッチパネル操作により、スマホを使う感覚で各種設定から撮影、閲覧まで可能になる。撮影時も画面をぐるぐると回しながら全体を把握できるし、撮影した画像も指先の操作で全天球をさっと把握できる。
従来のTHETAは単体での撮影はできるものの、細かい設定やプレビューや撮影画像の閲覧にはスマホが必要だった。THETA Xでは完全にスタンドアロンで使えるようになったのだ。
360°撮影に精通したカメラマンではなく、業務の担当者がその場で撮影するとなると、THETAはスマホとの連携が必要になるため少しハードルが高く、ビジネスユーザーからもっと簡単に使いたいという要望が多かったのだという。
確かに単体で撮影できればハードルはぐっと下がるし、モニターを見ながら撮影して、その場で再生してチェックできるのは良い。
スタンドアロンでの利用を前提にしたことで、従来スマホ経由で行っていた位置情報の付加やファームウエアアップデートの問題も出てくるが、前者はGPSを内蔵することで解決した。後者はTHETA Xを直接Wi-Fiのアクセスポイントにつなぐことで対応する。
内部がAndroidベースでWi-Fiにつながりタッチパネルで操作できる、という進化によりプラグイン(本体機能を活用するアプリ)の幅も広がるし、Wi-Fi経由で離れた場所からリアルタイムで360°画像をチェックできるためリモートでの現場把握にも使えるようになる。
業務で使うには「より高い解像度が必要」「バッテリー交換や外部記録メディアへの対応」という要望が多く、それらにも対応した。
センサーサイズは1/2型で4800万画素相当のものを2つ搭載。ステッチ後の画像は6000万画素相当(長辺で約1万1000ピクセル)と大幅に増加。1型センサーを搭載したTHETA Z1でも長編が約6700万ピクセルだったので大幅な増加だ。
さらに約46GBの内蔵ストレージに加えてmicroSDXCカードにも対応。バッテリーはGRシリーズと同じものを採用している上、バッテリーがなくてもUSBで給電しながら撮影できる。
動画も、音声こそモノラルになったものの、4Kで60fps、5.7Kでも30fpsの360°動画を撮れるようになった。
これでTHETAのラインアップは3モデルとなった。低価格でカラフルな「THETA SC2」はカジュアルなTHETA、1型センサーを搭載してRAW撮影もできるTHETA Z1はハイエンドTHETA、新しいTHETA Xは“お仕事THETA”ってイメージで捉えてよいと思う。
と、業務用に開発されたものではるが個人で360度画像を撮る人にも魅力的だ。解像度が高くなったのみならず、スマホでアプリを起動しなくても単体ですぐ撮れてチェックできるのだ。
説明会ではリコー、Smart Vision事業センターの藤木仁副所長が「もともと業務向けに開発してきたが、普段使いでも使いやすいので一般のユーザーにも使ってほしいと心の底で思ってる」と話していた。
わたしも少しだけ使ってみたが、その意見に同意したい。実際の使い勝手や画質、操作感についてはすでに製品が手元にあるので、近いうちに別途レビューする予定だ。
リコーが初代THETAを発売したのが2013年の秋。当初はワンショット360°カメラの代名詞として、コンシューマー向けに写真・映像表現を広げるツールという役割を担ってきたが、ここ数年はビジネスで活用されるようになり、さらに伸びていくことも予想されている。リコーはそれを見越してカメラの販売のみならず、ソフトウェアやクラウドをパッケージにしたSmartVision事業に軸足を移すと考えていいだろう。
THETAらしい進化だと思う。
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