乱立するメタバース関連団体 養老氏率いる「メタバース推進協議会」に“不思議さ”を感じるワケ(4/4 ページ)
2021年末以降、メタバースには急速に注目が集まっている。その関係からか、日本国内だけでも、筆者が把握できる限り、すでに4つの関連団体が作られ、乱立との指摘もある。養老孟司氏率いる「メタバース推進協議会」はどんな目的を持って作られたものなのか、会見に参加した筆者の視点から考えてみた。
メタバースは本当に「検討すべき事柄だらけ」なのか
また、協議会の設立理由としては、「法的な課題の整理」という点も挙げられている。
それは具体的に何なのか? という問いに対しては、常任理事の木内氏が次のように答えている。
「今話題になっているプロジェクトの1つに、5Gと8Kの遠隔医療があります。厚生労働省などでどこまでできるが検討が進んでいますが、論点がまだ十分に整理されていません。こうしたことを一つ一つ解決していきます。メタバースになるとまた追加の論点が出てくる。GameFi(もうける要素を取り入れたゲームとその金融)にしても、その中のNFTは賭博にあたるのがどうか? 監督官庁も決まっていません。そうした部分を協議会で整理し、迷子にならないようにしたいと考えています」(木内氏)
この点は確かにそうだ。
メタバースという言葉がふんわりしたものだけに、どこまでも新しい概念になりそうに思える。人類が経験したことのない新空間、という印象を持ちそうだ。
だが実際には、そうでないものも多い。メタバースというと特別なものに思えるかもしれないが、「ネットサービス」である以上、現在のWebやスマホが抱える課題・法規制と地続きである。挙げられた例はメタバース側というより、遠隔医療でありNFTの法的整理の問題かとは思う。
その上でなお、新しい概念の上で整理すべき事柄がある。
触れられていない事柄で言えば、例えばプライバシー保護などはどうなるのだろう? これはWebでのものから、さらに慎重な議論が必要になる可能性もあるし、一方で、ルール的にはWebで適応されているもので対応可能、という見方もできる。
だとするなら、まずやるべきはまさに「交通整理」。メタバースが具体的になにを指していて、どこからどこまでが関係するのか、ということを検討する必要があり、そこは「実際に手掛けている人」の参加が不可欠だ。
ITの世界はここまで、「まず作ってみて、その後にルールに合わせて修正していく」やり方のところが勝ってきた。メタバースもそうなるだろう。ビジネス参加の面で、IT業界の外にいる人々はそこに不安を感じるかもしれない。
だとするなら、やはり早期に「すでにメタバースでビジネスをしている人々」を取り込むべきだし、初手から彼らの姿があるべきだろう。
法的な整備や業界からの意見を出していくための窓口として、業界団体は必要なものだ。ただ、作るなら効果的なものでないといけない。団体づくりは難しいもので、いきなりいろいろな業界から理想的にメンバーを集められるものでもない。だが、やはり必須な人々はいる。スピード勝負の中での実効性を考えるなら、バラバラの団体で進めるのも効率的ではないし、メタバースのどういう部分にどういう団体が必要なのか、その整理をして進むべきではないだろうか。
もしくは、この団体自体が「技術側に働きかける団体」と役割を明示してしまえば、話は分かりやすくなるだろう。
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