イーロン・マスクが唱える「自由なTwitter」の功罪 買収がもたらす“変化”とは(3/3 ページ)
イーロン・マスク氏が、Twitterの全株式を買収し、運営に携わることとなった。マスク氏は、Twitterを誰もが自由に話せるべき場所にしたい、と考えているようだが、この「自由」とはどんな意味を持つだろうか。
「広告とユーザー数の成長」からの脱却が狙いか
マスク氏は「Twitterとエコシステムの収益構造を変える」ことで健全化を狙っている部分もある。
例えば「Botの排除」だ。
広告などへの誘導を目的としたBotによる自動ツイートは多数あり、それがTwitterのタイムラインを荒らす例は多い。言及量が増えているように見せるため、Botを使って支持者が多数いるように見せかける行為も増えており、政治的な意図や国家の関与を示す例も見受けられる。
これらのことには、これまでもTwitterは対処をしてきた。だが、完全な排除には至っていない。
そして「アルゴリズムによって話題のアンプ(拡声器)になる」という現在のTwitterの特性は、Botの横行を招く結果にもなっている。
Twitterは広告によって運営されており、利用者数の増加(単純なユーザー数増加と、頻繁に利用するユーザー数増加の両方)が、ビジネス価値の拡大に直結する。
場が荒れることはTwitterの本意ではなく、Bot対策に積極的なのは事実だろうが、注目を集めることがTwitterの運営にプラスであるのは間違いなく、Botは人が集まりやすい部分、すなわち「話題」があるところに現れる。現状のエコシステムにはBotが集まってしまう、という点も否定はできない。アルゴリズムが多分に「アンプ的」であるのも、結局広告で運営する場合には、その方が利用量を増やしやすく、有利に働くからだ。
これを解消するには、「株主の成長に対するプレッシャー」から抜け出す必要はある。
Twitterを1つのメディアとして考えた場合、安定した長期的な価値の維持が重要だ。だが、「成長による株価の上昇」を期待する株主が多かった場合、安定よりも短期的な成長が求められ、経営方針がそちらに傾くことは多い。
純粋な広告運営から有料アカウントの導入へ、という話も出ているが、これは、過去に新聞などのメディアがたどった道と同じである。全員から費用を徴収することはできないが、コアな有料会員+無料会員という構造を作り、収益の軸を有料会員に置くことで、「メディアとしての安定」を狙っているわけだ。このような方法論をとることは、短期的な成長を捨てることにもなり、株主の反発を招きやすい。だが、メディア企業にはよくある選択肢の1つとはなっている。
結局、オープンソース化も含め、マスク氏の判断は「ユーザー数の成長を唯一の指針とする」ことからの脱却が軸にある、と言えるかもしれない。
「マスク氏の考える自由」に賛同できるかがポイント
筆者は、少なくとも「ツイート後すぐなら編集できるようにすべきだ」というマスク氏の考えに賛成する。オープンソース化も基本賛成だ。
とはいえ、マスク氏がどうBotの排除を進めるのかは分からないし、オープンソース化したアルゴリズムが真に「自由」かも、その姿が見えて、更新が始まってみないとわからない。
今後のTwitterは「マスク氏の理想とする自由を実現する場」になるということであり、彼がそこにどこまで長期的にコミットし続けるかにもかかっているだろう。ただ、オープンソース化も含め、その過程を「可視化できる」ことは、人々が続けるにしろ離れるにしろ、いい判断基準になるのではないだろうか。
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