自宅で宇宙を独り占め――日食も流星群も、惑星が並ぶ天文ショーも再現 “バーチャル星空観察”のススメ:遊んで学べる「Experiments with Google」(第7回)(2/2 ページ)
流星群や日食、惑星が並ぶ現象など珍しい天文ショーを見逃すことは多々ある。そこで“バーチャル星空観察”をテーマに、自宅で夜空を満喫できるWebコンテンツを紹介する。
地上から見える星空は、宇宙のほんの一部にすぎない。視点を変えて宇宙から地球を見てみると、太陽系を立体的に把握できる。
Experiments with Googleには、宇宙からの視点で星々を眺められるコンテンツも用意してある。
あの日、あの時、あの星は? 日食も再現できる「jsOrrery」
最初に紹介するのは、日時を指定して惑星の配置を確認できる「jsOrrery」だ。
惑星や準惑星、地球と月、木星とガリレオ衛星などの動きをアニメーションで表現したり、アポロ16号や人工衛星の軌道を再現したりと内容は盛りだくさんある。地球から見た月の満ち欠けをシミュレーションする機能を使えば、2022年4月30日に南米で見られる部分日食を再現できる。
東の空に惑星が並んだ4月24日の朝、太陽系はどんな姿だったのだろうか。jsOrreryを使って再現してみると、手前側に火星や木星などが集まっている。そのため、地球から見ると惑星が並んで見えるのだ。ドラッグして見る角度を変えると、各惑星の位置関係をさらに把握しやすくなる。
このコンテンツは、JavaScriptとWebGLを使って動かしている。惑星などの位置データは、Planetariumと同じくNASA JPLから得たデータを活用している。
詳しい解説はWebページで読める。またソースコードもGitHubで公開しているので、開発者は参考にできる。
流星群を太陽系規模で再現できる「Meteor Showers」
もう1つ紹介するコンテンツは、流星群の様子を太陽系規模で再現できる「Meteor Showers」だ。
そもそも流星群は、彗星や小惑星が軌道上にまき散らした粒子の中を、地球が通るときに起きる現象だ。地球の動きは一定なので、毎年決まった時期に見られる。
試しに、例年8月に見られるペルセウス座流星群をMeteor Showersで表示してみた。すると、何やら大量の細かな粒子が動いている軌道を、地球が時々横切っている。この横切ったタイミングが、地上で流星群を見られるときに当たる。
流星群を作り出す粒子群の軌道は複数あるので、流星群も複数存在する。粒子の種類や大きさ、密度などは軌道ごとに個性があり、それが流星群の特徴を作り出す。
例えば、例年4月に見える「こと座流星群」を見ると、ペルセウス座流星群より粒子の密度が低い。そのため、こと座流星群の時期に現れる流れ星の数は、ペルセウス座流星群ほど多くない。Meteor Showersを使うと、こうした流星群の仕組みを一目で理解できる。
Meteor ShowersはWebGLの他に、粒子の動きを表現できるJavaScriptライブラリ「Particles.js」を使っている。Experiments with GoogleでParticles.jsを使ったコンテンツ一覧を見ると、実に多彩な表現に応用できると分かる。
Meteor Showersもソースコードを公開しているので、こうした表現の良いお手本になりそうだ。
雨でも曇りでも、自宅から満天の星空を眺められる
今回紹介したコンテンツは、天気に左右されることなく、世界中の好きな場所で好きな日時の星空を眺められる。同じことは、大きなドームに星を投影するプラネタリウムでも可能だが、自宅から満天の星空を眺められる手軽さはPlanetariumのほうが一枚上手だ。
PlanetariumやjsOrrery、Meteor Showersで分かるように、データさえ用意すれば流星群や珍しい巨大彗星も再現できる。VRゴーグルに対応させれば本物の星空を見ている気分になるだろう。理科の教材としても、エンターテインメントとしても、可能性は大きいといえそうだ。
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