生きた皮膚を持つ指型ロボット、東大が開発 傷がついても再生可能
東京大学大学院情報理工学系研究科などの研究グループは、生きた皮膚を持つ指型ロボットを開発したと発表した。研究チームは人の皮膚細胞から作った「培養皮膚」で立体物を被覆する手法を開発し、ロボット全体を覆ったという。
東京大学大学院情報理工学系研究科などの研究グループは6月10日、生きた皮膚を持つ指型ロボットを開発したと発表した。研究チームは人の皮膚細胞から作った「培養皮膚」で立体物を覆う手法を開発。生きた皮膚をまとった世界初のロボットを作製したという。
指型ロボットの周囲を真皮組織(皮膚の内側の組織)で覆いゲル化させると真皮組織が激しく収縮、ロボットをぴったりと被覆する培養皮膚を形成する。その後、培養皮膚の表面に表皮(皮膚の外側)の細胞を培養することで表皮層を作り、培養皮膚組織を作製した。
指型ロボットは3関節で、中心部を通るワイヤをモーターで引くことで関節運動を行う。ロボットは形成された培養皮膚を破壊することなく関節運動ができる。
培養皮膚表面には撥水性(水をはじく性質)のある表皮の層が形成された。また指型ロボットを被覆する培養真皮組織は、傷がついてもコラーゲンシートを傷口に貼ることで修復できるという。修復後もロボットは再び関節運動でき、傷口部分が一体化していることも確認したとしている。
ロボットが他の物体と触れる際、ロボット自身や触れた物体、人間を接触から守るために皮膚のような柔らかい外装が必要になる。一方、柔らかい外装は細かな裂傷を負いやすいが、ロボットが傷つくたびに修理すると大きなコストがかかる。そのため、外装には自己修復能力を持つことも求められていた。
今回開発した技術は、将来のヒューマノイドロボットの被覆材料や義手や義足への応用、皮膚を対象とした化粧品や医薬品の開発、移植素材としての再生医療分野での活用も期待できるという。
この研究成果は米国科学誌「MATTER」のオンライン版に6月9日(現地時間)に掲載された。
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